最新記事

ネット

韓国、新型コロナウイルスでデマニュースから隔離生活まで 天災もネタにするユーチューバーたち

2020年3月12日(木)20時35分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

隔離生活をアップする強者も

一方で、同じくYouTubeサイト上では、2月9日「슬기로운 격리생활(賢い隔離生活)」と言う動画をアップしたユーチューバーが波紋を呼んでいる。隔離施設に指定された春川南道の「警察人材開発院」に収容され、2週間の隔離生活を送るユーチューバーが1日の様子を撮影編集した動画を公開した。

朝起きてから、隔離生活中の部屋の中での生活を記録しただけの動画だが、ユーチューバーがよく自分のチャンネル内でやっているプレゼントの開封動画が、企業から送られてきた救護キット開封動画であったり、配給される食事を紹介したり、暇を持て余して自分の靴をDIYで色を付けてみたりと、盛り沢山の内容だ。

SNSを中心に話題となり、現在66万回再生(3月11日現在)されている。しかし、これに対する視聴者の意見は分かれてしまった。YouTubeはその動画に広告が付いている場合、再生回数に伴って広告収入が入るため、「病気をお金にするな」「病院には今危篤状態の患者もいるのに何事だ」という怒りの声が寄せられる一方で、「いつ自分も感染し陽性になって隔離されるとも限らない。そうなったときのためにどのような生活なのかシェアしてくれるのはありがたい」という意見も上がっている。

このユーチューバーは感染者ではなく、中国の武漢から帰国したため隔離生活を余儀なくされた人で、体調も問題なく現在は隔離期間も終了して家族の元に帰っている。動画の中では、DIYを楽しんでいる姿や、差し入れを紹介してのんきに「ここ、すごく良いところ」と話す部分などが不謹慎だとして批判が集まったようだ。

「コロナ」関連動画をYouTubeが監視するように

新型コロナウイルスが世界的に広がりを見せるようになった頃から、YouTubeにはコロナ関連の動画が多く配信されるようになった。人々が検索し再生回数が増えるように、一部のユーチューバーたちは嘘か本当かわからない情報を元に動画を作り、より関心を集める内容にするため誇張した表現を使うようなった。

これによるデマ情報の拡散を防止するため、YouTubeは広告収入制限処置の対応を取っている。現在は、「コロナ」という言葉がNGワードになっているようで、コロナという単語や、連想させるような動画をアップすると広告収入が入らないように設定されているようだ。

この対応に困っているのが、ニュースを扱う世界のユーチューバーたちである。今一番世界規模でホットなニュースが「コロナウイルス」関連なのだが、この動画ばかり作ると収入が激減してしまう。

ちなみにYouTubeの広告収入NGワードは、AIが選別してキーワードを弾いているという。これまでにも韓国国内では、「文在寅大統領」「プーチン大統領」「日本」など政治的問題に関連したキーワードが付いた映像について、AIが収益制限措置を設定し、報道と発言の自由を求めるユーチューバー側と議論になったこともある。

今はスマホ一つ持っているだけで次々と情報が溢れ出てくる時代だ。YouTubeだけでなく、Twitterや各種SNSから誤った情報が押し寄せてくるため、混乱した状態の中、日本では先日のトイレットペーパー買い占め事件のようなパニックを起こしてしまう。

一方では、隔離生活を送る患者やクルーズ船乗客に「頑張れ」とエールを送るツールとなったり、お手製マスクの作り方など、有意義な情報の発信の場になったりする使い方もある。

こんなときだからこそ、すべてにNGワード制限がかかってしまい、本当に必要な情報が必要な人に届かなくなってしまわないように、自己中なネットの使い方は慎むべきだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中