最新記事

2020米大統領選

サンダースが推すアメリカ版「国民皆保険」は、社会主義どころか大きなコスト削減につながると新研究

Medicare for All Would Save $450 Billion Annually, New Study Shows

2020年2月19日(水)18時40分
ジェイソン・レモン

国民皆保険制度については、共和党のみならず民主党内の中道派からもかなり厳しい批判がある。彼らが疑問視するのは、政府が負担するコストの財源をどう考えているのかということだ。

サンダースとウォーレンは、連邦政府が単一の保険提供者となる国民皆保険制度を特に推している、

だが大統領指名を争う民主党候補たちは、公的医療保険制度の拡大を支持しつつも、それとは違うことを主張している。ピート・ブティジェッジ元サウスベンド市長とジョー・バイデン前副大統領、エイミー・クロブチャー上院議員らは、民間の医療保険に加入する権利を維持すると同時に、弱者のための「公的な選択肢」が存在するべきだと主張する。ブティジェッジは自分の案を「求める人すべてのための医療保険」と名付けた。

ガルバニにいわせると、ブティジェッジの案は、コストの削減どころか増加につながる。「一般管理費や医薬品コスト、病院や診療所の診療費、および不正行為の摘発にかかる費用にあてる財源がなければ、『求める人すべてのための医療保険』は、現状よりも年1750億ドルほど高くつく可能性がある」と、彼は本誌に語った。「『メディケア・フォー・オール』より6000億ドル以上、多くなる」

予想される強い抵抗

民主党の誰かが大統領になった場合、大がかりな医療制度改革案をねじれ状態にある議会で成立させるのはかなり困難な戦いになる。一部の穏健な民主党員でさえ、国民皆保険制度を支持することに不安を抱いている。そして共和党は長い間、国民皆保険制度への移行をめざす左派の動きに抵抗している。

バラク・オバマ大統領時代に成立した医療保険制度改革法(オバマケア)は、公的医療保険ではなく、従来の民間の保険への加入を個人に促す仕組みだが、いまだに保険加入の義務化をめぐって裁判所で憲法判断が争われている状態だ。トランプ政権は代替法案を導入することなく、この制度を完全に撤廃しようとしている。

国民皆保険制度に関しては、これまで他の研究で今回のガルバニらの研究とは異なる結論が出ている。コストが削減できるという結論に達した研究もあれば、コストが大幅に増えると予測する研究もある。

経済政策研究所のビベンズは本誌に、今回の研究は国民皆保険制度によるコスト削減を高く見積もりすぎていると、指摘したが、「それほど大きく外れているわけではない」と語った。「メディケア・フォー・オールのような制度を10年以上続けられれば、大きなコスト削減になるのは間違いない」

(翻訳:栗原紀子)

20200225issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月25日号(2月18日発売)は「上級国民論」特集。ズルする奴らが罪を免れている――。ネットを越え渦巻く人々の怒り。「上級国民」の正体とは? 「特権階級」は本当にいるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中