最新記事

オーストラリア

オーストラリアの動物受難はコアラだけじゃない、5日間で何千頭ものラクダが射殺された

Thousands of Camels Culled in Australia

2020年1月16日(木)18時30分
カシュミラ・ガンダー

ラクダは地域のインフラに損傷を与え、在来の植生を脅かすばかりか、水源地を汚染したり、先住民の文化遺産を破壊したりすると、キングは言う。酷暑と水不足が続くなか、ラクダの侵入で「放牧圧」(放牧地の面積当たりの動物の数)が拡大することで、地域の畜産農家も被害を受ける。

キングによれば、原産種の野生動物は長引く干ばつに耐えられるが、「野生化したラクダは極度に衰弱し、ぬかるんだ場所や野生動物が集まる水場によろよろとたどり着くと、その場で息絶えてしまう。死骸は大きな汚染源となり、ほかの動物や鳥が飲みにくる水が汚染される」という。

動物福祉の立場から、駆除は最善の対策ではないとの声も上がっている。キングはそうした懸念は尊重するが、「地球上でも最も乾燥した辺鄙な場所の1つにおける、野生化した外来動物の実態については、甚だしく誤った情報が流布している」と主張する。

「駆除は大成功!」

キングによれば、自治区には土地を管理する責任があり、「貴重な水源を守り、幼児や高齢者を含め全ての住民と原産種の動植物の生命を最優先する立場で」、外来の害獣に対処しなければならない。

駆除は昨年12月11日、自治区の運営委員会に加え、自然資源管理当局や先住民の地主ら、地域の利害関係者が参加した会議で決定された。

「当局の認可を得て、最高度の専門的な基準を守り、最も人道的な方法で」実施されたと、キングは言う。動物を殺すというやり方に「一部の先住民集団はスピリチュアルな葛藤」を抱いたが、ラクダの頭数管理の必要性を認めたという。

自治区の放牧地の管理責任者マイケル・クリンチは、駆除は「文句なしの成功」だったと述べた。

「射撃のプロの協力、そして空からも地上でも、全てのチームが一丸となって任務を遂行したことに、私たちは深く感謝している。心から『ありがとう』と言いたい」

20200121issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月21日号(1月15日発売)は「米イラン危機:戦争は起きるのか」特集。ソレイマニ司令官殺害で極限まで高まった米・イランの緊張。武力衝突に拡大する可能性はあるのか? 次の展開を読む。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナに大規模攻撃、西部テルノピリで25人死亡

ワールド

ウクライナに大規模攻撃、西部テルノピリで25人死亡

ワールド

エプスタイン文書、米司法省が30日以内に公開へ

ワールド

ロシア、米国との接触継続 ウクライナ巡る新たな進展
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中