イラン、「アメリカに死を」が「独裁者に死を」へ 旅客機撃墜に憤る国民
支持層が抗議活動に
「(撃墜の)悲劇が忘れられることはないし、国外からの制裁だけでなく、国内から圧力を受ける国民がこの悲劇を克服するのは簡単ではない」と、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のサナム・バキル上席研究員は言う。「今回の件は統治に大きな欠陥があるということを明らかにした」
8年間にわたったイラクとの戦争など、イランのイスラム政権は過去にもっと深刻な状況を乗り越えてきた。しかし、ガソリンの値上げを機に発生した11月のデモで真っ先に通りに出てきたのは、これまで政府の気前良い援助を享受してきた貧困層、下流層という、盤石な政権支持者たちだった。
抗議の声はすぐに政治的なものに変わり、彼らは指導部の退陣を要求。当局が厳しく取り締まった。
「再び国民を殺した」
事故だったかどうかに関わらず、軍部が旅客機を撃墜したことが明らかになったことは、イラン政権にとって新たな打撃だ。乗客の多くはイラン国籍も保有していた。
ソーシャルメディアはイランの人びとからの怒りの声であふれた。イラン政府が遺族をいたわるよりも、墜落の責任を否定することに時間を割いていたという内容のコメントが多くみられた。
「国民には衝撃だった。政権は再びぞんざいに国民を殺した」と、米外交問題評議会のシニアフェロー、レイ・タケイ氏は言う。「ソレイマニ司令官の殺害が国民を団結させたとする、もともと偽りだった物語が壊れた」
2月21日は、議会選挙と並行して専門家会議のメンバーも選ぶ。イスラム法学者で構成されるこの機関は、80歳になるハメイニ師の後継者をいずれ選出する任を負う。
ハメイニ師に任期はなく、イラン・イスラム共和国を樹立したホメオニ師が1989年に死去して以降、最高指導者の地位にいる。
[ドバイ 11日 ロイター]
2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。