最新記事

台湾のこれから

日本は台湾からの難民を受け入れる準備ができているか

JAPAN NOT READY FOR TAIWANESE REFUGEES

2020年1月11日(土)11時50分
トラビス・サンダーソン(台北在住ジャーナリスト)

新しい難民コミュニティーが日本社会に波紋を広げかねない(横浜の中華街) NEWSWEEK JAPAN

<1月11日の総統選で蔡英文が再選されたら習近平はどう出るか。中国による再統一に怯える台湾人たち。ほとんど語られていない問題がある。本誌「台湾のこれから」特集より>

20200114issue_cover200.jpg

1949年に中国共産党が中国本土を掌握して以来、台湾奪還は「中華民族の偉大な復興」の要となってきた。建国70周年を迎えた2019年10月1日、習近平(シー・チンピン)国家主席はその基本理念を改めて強調した。

一方で、台湾の防衛と軍備の発達を考えれば、人民解放軍が台湾に侵攻して再統一を果たすというシナリオは、アメリカが介入して台湾を守るまでもなく、可能性はかなり低いと多くのアナリストがみている。

ただし、武力による再統一の試みが失敗したとしても起こるであろうある問題が、ほとんど語られていない。すなわち台湾難民危機だ。

軍事侵攻を受けて台湾政府が緊急事態を宣言した途端に、経済的余裕のある人々は脱出を始めるだろう。最近の世論調査によると、台湾人の65.4%が人民解放軍を撃退できないと考えている(実際は多くの人が台湾の軍事能力を過小評価しているのだが)。侵攻が失敗しても、さらなる危険を恐れる人が続々と祖国を離れるだろう。

その場合、日本に難民申請者が殺到する可能性は高い。1895年から1945年まで、日本は台湾を植民地として統治した。現代の台湾社会は交通機関や言語など、さまざまな形で日本の影響を受けている。

日本が台湾を返還した後、国民党政府が戒厳令下で容赦ない弾圧を行ったため、植民地支配下での記憶は和らいだ。対日感情は基本的に好意的だ。台湾を離れた多くの人は、地理的な近さと文化的な親近感と歴史的な結び付きから、日本を目指すだろう。

ただし、難民危機に対して、日本は世界でも特に準備不足だといえる。2015年のシリア難民危機に際し、ヨーロッパとトルコの対応は今や破綻しかけているが、少なくとも日本よりはるかにましだろう。西アジアやアメリカも含む世界各地の政府が大量のシリア難民の受け入れに苦慮してきたが、日本は傍観者のままだ。

「日本は世界第3位の経済ながら、難民認定者は(2017年までの)5年間で100人に満たない」と、ニュースサイトのビジネス・インサイダーは指摘する。その大きな理由の1つは、近隣で既に難民危機が進んでいる北朝鮮からの「大量流入」への警戒だ。しかし、難民認定に消極的なことは、経験不足と貧弱な難民政策という悪循環を招く。

【参考記事】蔡英文「優勢」の台湾総統選、有権者の揺れる思いと投票基準

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国首相、フォーラムで一段の経済開放約束 日本企業

ワールド

G7、エネ供給支援へ必要な措置講じる用意 外相声明

ワールド

トランプ氏、米空港にICE捜査官派遣と警告 予算巡

ワールド

トランプ氏、イランに48時間以内のホルムズ開放求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 4
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 9
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中