EU諸国の無策で再び訪れる欧州難民危機
The Next Wave of Migrants
北アフリカの国リビアには、アフリカ諸国からヨーロッパを目指す人が集まってくる。彼らは地中海を渡る船に乗るまでの間、密航業者が運営する施設に収容されるが、その環境は「衝撃的なレベルだ」と国連は報告している。
ドナルド・トゥスクEU大統領は2017年に、地中海中央ルート(リビアからイタリアを目指すルート)を閉鎖すると発表。これを受け、リビア沿岸警備隊は密航船の取り締まりを強化した。密航船は拿捕され、人々は密航業者の収容施設に送り返され、十分な食べ物も医療も与えられない。
一方、トルコ当局の監視の目をかいくぐり、エーゲ海を渡ってギリシャに到着する難民は、再びじりじりと増えている。2019年1〜11月にギリシャの離島にたどり着いた庇護希望者は4万4000人と、既に昨年1年間の総数3万2500人を35%上回る。
このためギリシャの難民キャンプはパンク状態にある。ドゥニャ・ミヤトビッチ欧州委員(人権担当)は10月末、これらのキャンプは「大惨事の瀬戸際」にあると語った。これは難民認定手続きが長期化しているためで、ギリシャでは推定10万人が劣悪な環境のキャンプで暮らしている。
だがギリシャの新政権は10月末、難民審査の厳格化に踏み切り、難民申請者はこれまで以上に長く足止めを食うことになった。11月19日、ギリシャ政府は9月にレスボス島のモリア難民キャンプで発生した火災を受けて、キャンプの閉鎖を発表。2週間前にはギリシャ北部で冷蔵トラックの荷台に乗り込んでいた不法移民41人が警察に発見されたばかりだった。こうした事件が物語るように、危険をいとわず新天地を目指す人たちは後を絶たない。
今後数カ月、さらには数年間、ヨーロッパにはこれまで以上に多くの難民が押し寄せるだろう。イラク、シリア、イエメンで今も紛争が続く上、気候変動で居住不能になった故郷を捨てる環境難民が大量に出ると考えられるからだ。
EUは今そこにある難民危機だけでなく、今後の大量流入も見据えて、有効な対策を打ち出さねばならない。長期にわたる地球規模の大移動を見越した政策が必要であり、立案は困難を極めるだろう。だが立案できなければ、さらに多くの難民がさらに劣悪な環境に置かれることになり、難民の不満も一般の人々の排斥感情も高まる一方だ。
もちろん妥協が必要だ。ギリシャなど一部の国に負担を押し付けず、ヨーロッパの全ての国々が受け入れを進める必要があるのは明らかだが、EUが負担の分担で早期に合意をまとめることは望み薄だ。そこで4つの重要な課題に絞って議論を進め、具体的な施策を講じるよう提案したい。