最新記事

女性問題

経済面での男女格差是正まで257年、特にリケジョ活躍の場が乏しい実態が明らかに

2019年12月24日(火)17時30分
松丸さとみ

また、採用が活発な職業には当てはまらなかったが、自動化技術エンジニア(12%)、アンドロイド開発者(13%)、ロボット・エンジニア(18%)、サイバーセキュリティ専門家(19%)など、非常に特殊なスキルセットが求められる職種でも、女性の進出が遅れていることが分かった。

STEMにはもともと女性の絶対数が少ないと思われがちだが、報告書は、例えばデジタル・スペシャリストでは女性の割合41%に対して、人材プール(潜在的な人材の蓄え)における女性の割合は53%だと指摘。その他、多くの分野で人材プールの女性を活用できておらず、女性の割合を引き上げるための余地はまだ残っているとしている。

自分を褒められない女性研究者たち

WEFのジェンダー・ギャップ指数で示された、理系女性が労働市場で活躍し切れていない様子を裏付けるような調査も、ほぼ時期を同じくして発表された。

女性研究者は男性研究者と比べ、論文を書く際に自分の研究を称賛しない傾向にあるというものだ。この調査は、ドイツのマンハイム大学の経済学者マーク・レルヒェンミュラー氏らによるもので、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)に発表された。

過去15年間に発表された医学論文10万本と生命科学の記事620万本を研究チームが分析したところ、「斬新」「比類ない」「卓越した」など25種類の「自画自賛」表現のうち、少なくとも1つを含んでいるものは、女性研究者の方が12%少なかった。さらに、影響力のあるジャーナルに発表されたものでは、この差は21%にアップした。

カンザス大学の経済学者ドナ・ギンサー氏(この調査には不参加)は米ワシントン・ポスト紙に対し、このような言葉のチョイスはその人たちの性分なのか、それとも編集過程や文化的な影響を受けているのか?が問題だと述べた。

レルヒェンミュラー氏は、今回の調査では、女性たちがなぜこのような言葉の選び方をするかまでは突き止められない、としている。とはいえワシントン・ポスト紙は、以前発表された別の研究を引き合いに出し、女性研究者が提出した論文は、編集の段階で細かい部分にまで目を光らせてチェックされ、長時間かけてレビューされる傾向にあると指摘。同紙は、これらを含むさまざまな研究から、女性がキャリアを通じて偏見に直面することは明らかだとしている。

STEMで活躍する女性の割合が増えれば、こうした傾向も是正され、経済格差の縮小、ひいては全体的な男女格差の縮小に寄与するのかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中