最新記事

待遇格差

約半数が月収20万未満の超薄給......幼稚園教員・保育士の「生活が成り立たない」現実

2019年12月11日(水)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

給与に不満を持つ保育士も多く、2018年の東京都の調査によると,都内の保育士の6割近くが給与に不満足と答えている。その一方で、仕事のやりがいに満足という保育士も7割と多い。日本の保育の現場は、保育士の「やりがい感情」に支えられているが、その砂上の楼閣はいつ崩れてもおかしくない。

保育士の薄給問題に隠れて取り沙汰されることは少ないが、幼稚園教員の待遇の悪さも明らかだ<図1>。幼稚園は3~5歳の幼児の教育を行う「学校」だが、そこで働く教員の大変さもよく指摘される。小学校にもまして、モンスター・ペアレンツの出現度は高い。それにもかかわらず待遇は劣悪。<表1>にみるように、幼稚園教員の病気離職率は小学校段階以降に比して格段に高くなっている。

data191211-chart02.jpg

あまり取り上げられることはないが、教員の問題が最も深刻なのは就学前の段階かもしれない。10月から幼稚園・保育所の費用が無償になったが、ここにかなりの財源が投入される一方で、懸案の幼稚園教員や保育士の給与はほぼ据え置きだ。

富裕層の優遇にもなりかねない一律無償化よりも、幼稚園教員や保育士の待遇を改善し、待機児童問題の解消や、教育・保育の「質」の担保に重点を置くべきだ。無償にしても、入れなければどうしようもない。消費税アップで得られる財源を教育振興に充てるのは結構だが、優先順位を誤ってはならない。先月閣議決定された『子供の貧困対策に関する大綱』では、重点施策として「幼児教育・保育の無償化の推進及び質の向上」が掲げられている。その一環として、幼稚園教員や保育士の処遇改善は急務だ。

<資料:文科省『学校教員統計』
『東京都保育士実態調査』(2018年度)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

インタビュー:USスチール、28年実力利益2500

ワールド

ネタニヤフ氏、恩赦要請後初の出廷 大統領「最善の利

ワールド

ロシア安保会議書記、2日に中国外相と会談 軍事協力

ビジネス

米サイバーマンデー売上高、6.3%増の見通し AI
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 5
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中