最新記事

音楽

音楽が人類にとって普遍的である理由──ダンス、子守唄...のパターンを分析

2019年11月29日(金)18時40分
松岡由希子

音楽には普遍的な文法があった...... Darinburt-iStock

<米ハーバード大学の研究チームは、世界中の315の社会集団を対象に「音楽は普遍的なのか」について研究した......>

米国の詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローは1835年に「音楽は人類に与えられた万国共通の言葉である」と綴った。はたして音楽は普遍的な言葉なのだろうか。およそ200年前の詩人の主張を裏付ける研究成果がこのほど明らかとなった。

世界315の社会集団の音楽を研究

米ハーバード大学の研究チームは、世界中の315の社会集団を対象に「音楽は普遍的なのか」について研究し、2019年11月22日、学術雑誌「サイエンス」で「音楽は、世界中、同様の方法で社会生活に浸透している」との研究論文を発表した。

音楽は、いずれの社会でも、子守りや癒し、ダンス、恋愛といった行動と関連があり、社会集団ごとにそれほど違いはないことが示されている。

研究チームは、5年かけてデータを収集。60の社会集団から約5000件におよぶ歌の記述や演奏を集めた民族学情報データベースと、30地域86社会集団のダンス音楽、ラブソング、ヒーリング音楽、子守唄の現場録音データ118件をまとめたディスコグラフィ(目録)を統合して、音楽にまつわる体系的な異文化間データベース「ナチュラル・ヒストリー・オブ・ソング」を独自に構築した(楽しいクイズもあり)。

さらに315文化を網羅した民族学データベースも用いて、楽曲の長さや歌われている年数、楽器の有無など、それぞれの楽曲を分析するとともに、リスナーの評価や専門家の注釈などをもとにディスコグラフィを分析した。

「子守唄とダンス音楽はどこにもあり、似通っている」

その結果、言葉の有無を問わず、音楽はすべての社会で確認され、なかでもダンス音楽、ラブソング、ヒーリング音楽、子守唄は、同様の音楽的特徴を持つことがわかった。

研究論文の共同著者であるハーバード大学の大学院生マンヴィル・シン氏は「子守唄とダンス音楽はどこにでもあり、非常に類型的だ」と述べている。

また、調性は、音楽理論では西洋音楽によってつくり出されたと考えられてきたが、この研究結果によると、世界中に広まっており、普遍的なものだとみられている。

研究チームは、「人間の心が音楽をどのようにつくり、これに反応しているのか」について理解を深め、普遍的な楽典の解明やその構築につながる第一歩として、一連の研究成果が役立つだろうと期待を寄せている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリアへの管理措置を停止 対中

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

中国、日本産水産物を事実上輸入停止か 高市首相発言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中