音楽が人類にとって普遍的である理由──ダンス、子守唄...のパターンを分析
音楽には普遍的な文法があった...... Darinburt-iStock
<米ハーバード大学の研究チームは、世界中の315の社会集団を対象に「音楽は普遍的なのか」について研究した......>
米国の詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローは1835年に「音楽は人類に与えられた万国共通の言葉である」と綴った。はたして音楽は普遍的な言葉なのだろうか。およそ200年前の詩人の主張を裏付ける研究成果がこのほど明らかとなった。
世界315の社会集団の音楽を研究
米ハーバード大学の研究チームは、世界中の315の社会集団を対象に「音楽は普遍的なのか」について研究し、2019年11月22日、学術雑誌「サイエンス」で「音楽は、世界中、同様の方法で社会生活に浸透している」との研究論文を発表した。
音楽は、いずれの社会でも、子守りや癒し、ダンス、恋愛といった行動と関連があり、社会集団ごとにそれほど違いはないことが示されている。
研究チームは、5年かけてデータを収集。60の社会集団から約5000件におよぶ歌の記述や演奏を集めた民族学情報データベースと、30地域86社会集団のダンス音楽、ラブソング、ヒーリング音楽、子守唄の現場録音データ118件をまとめたディスコグラフィ(目録)を統合して、音楽にまつわる体系的な異文化間データベース「ナチュラル・ヒストリー・オブ・ソング」を独自に構築した(楽しいクイズもあり)。
さらに315文化を網羅した民族学データベースも用いて、楽曲の長さや歌われている年数、楽器の有無など、それぞれの楽曲を分析するとともに、リスナーの評価や専門家の注釈などをもとにディスコグラフィを分析した。
「子守唄とダンス音楽はどこにもあり、似通っている」
その結果、言葉の有無を問わず、音楽はすべての社会で確認され、なかでもダンス音楽、ラブソング、ヒーリング音楽、子守唄は、同様の音楽的特徴を持つことがわかった。
研究論文の共同著者であるハーバード大学の大学院生マンヴィル・シン氏は「子守唄とダンス音楽はどこにでもあり、非常に類型的だ」と述べている。
また、調性は、音楽理論では西洋音楽によってつくり出されたと考えられてきたが、この研究結果によると、世界中に広まっており、普遍的なものだとみられている。
研究チームは、「人間の心が音楽をどのようにつくり、これに反応しているのか」について理解を深め、普遍的な楽典の解明やその構築につながる第一歩として、一連の研究成果が役立つだろうと期待を寄せている。