最新記事

COP25

12月2日から国連気候変動会議COP25 各国対立する争点は何か

2019年11月28日(木)17時20分

スペインの首都マドリードで12月2─13日、国連気候変動枠組み条約第2回締約国会議(COP25)が開かれ、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の実施ルールを詰める協議が行われる。写真は11日、山火事の煙で霞むシドニーの街並み(2019年 ロイター/Stephen Coates)

スペインの首都マドリードで12月2─13日、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が開かれ、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の実施ルールを詰める協議が行われる。

この問題を巡る争点をまとめた。

◎第6条

パリ協定第6条は、市場原理に基づく気候変動対策メカニズムのルールに関する条項。このルールは、温室効果ガス排出量の削減コストを軽減し、政府のコミットメントを高めるための世界的な排出量取引制度の土台となる。

第6条を巡る協議は3年以上前から続いているが、昨年の国連協議で合意形成に至らず、今年に持ち越された。

第6条は排出量削減の「二重計上」を避けるため「強固な計算方法」の導入を求めている。

二重計上は、ある国が他国の排出量削減を資金支援した際、その削減分を自国の排出削減量にも計上する場合に起こる。

この現象は、両国で削減量を二重計上できないようにする計算ルールを確立することで、回避できる可能性がある。

第6条には、市場メカニズムを用いる新たな制度も盛り込まれている。だが、一部の国は旧制度で得たクレジット(排出権)が失効しないよう、新制度への繰り越しを可能にすべきだと主張している。一方で、そうなれば安い排出権が大量に市場にあふれ、排出量削減の必要性が薄れると指摘する国々もある。

◎削減目標

科学者によると、既存の排出量削減目標は壊滅的な温暖化を回避できる水準にはほど遠い。各国は来年末までに目標を引き上げるよう迫られている。

具体的には、気候変動対策の資金を2020年までに年間1000億ドルとする既存目標額を引き上げ、その後にさらに増やしていく措置が含まれる。

今年9月の国連総会では各国政府から新規提案はほとんど出ず、企業、年金基金、保険会社、銀行などからの提案が相次いだ。

◎IPCCの1.5度特別報告

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は昨年、気温上昇を1.5度以内に抑えるには未曽有の変革が必要になるとする特別報告を発表したが、少数の経済大国が受け入れを拒否した。

報告書は気候変動の影響を最も受けやすい小さな島国の存亡に関わる内容とみなされれていたが、大国の拒否によって「水を指された」かたちとなった。

今年に入り、この報告書をパリ協定にどう組み込むかを巡って、一定の歩み寄りがあった。しかし、多くの国は、気温上昇を1.5度以内に抑えるとの目標が、パリ協定に今なお盛り込まれないでいることに失望している。

◎責任と補償

各国政府は気候変動が発展途上国に及ぼす影響に対処することで合意している。だが、責任や補償の詳細は未決定で、多くの、より貧しい国にとって争点となっている。責任や補償の仕組みがカバーすべき範囲――過去や将来の出来事も含めるか――についても、各国の意見が対立している。

[ロンドン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中