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中国農村部の高齢者は不幸なのか

2019年10月24日(木)13時30分
片山ゆき(ニッセイ基礎研究所)

なお、空き家をもとの家主から借り受け、リノベーションする費用は、主務官庁である民生局から5万元(80万円)が支給される。加えて、施設の1年間の運営費として更に5万元が支給されるとのことである。農村部での老後の生活は世帯扶養を中心とし、それを村や村民による住民委員会などの組織が支えている。都市化が進んだ地域では都市部と同様の介護保険制度を導入しているが、財源の関係上、まだ限定的なのが現状だ。

このように、空き家をリフォームし、小さな拠点を網目状に展開していくという取組みは、今回訪れた上海市郊外の区内320ヶ所で実施され、今後、500ヶ所まで増えれば、区全域をカバーできるという。一見すると、冒頭の上海市内の状況と大きく異なるため、その違いに目が行きがちである。しかし、当の高齢者は、長年住み慣れた地域で、顔見知りの人と一緒に老後を過ごしたいという思いが強く、都市部の施設への入居はしたがらないという。そこに住む高齢者の希望に応じた老後の生活のあり方を模索し、地域の住民を巻き込み、小さなコスト・横展開でネットワークを形成していく。このような取組はあくまで老後問題解決に向けた一歩であり、まだ課題はたくさんあるが、農村が抱える現実や実情に則した取組みとして全国的にも注目されているようだ。

訪問した際に、ボランティアで来ているという住民が厨房で作った素朴なパンを振舞ってくれた。何とも言えない心温まる味わいと、屈託のない笑顔が印象的であった。

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。

0218katagyama.jpg[執筆者]
片山ゆき
ニッセイ基礎研究所
保険研究部准主任研究員・
ヘルスケアリサーチセンター兼任

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