最新記事

ビットコイン

ビットコインの収益性を「シャープ・レシオ」で計算して分かること

2019年10月24日(木)11時44分
木村兼作(公認会計士)

さて、上記で計算した10%のリターンが良かったのか、悪かったのか、それだけでは判断できません。他の投資商品が同じ期間において15%のリターンを出していた場合、10%のリターンは相対的にみて悪かったということになるからです。したがって、投資商品の収益性を評価をするときは適切な対象物(ベンチマーク)と比較することが大事になります。

では、比較すべきベンチマークが見つかったとして、単純にリターンだけを比べてそれぞれの投資商品の優劣を評価できるでしょうか?

さきほどの例のように、ある期間においてリターンが15%の投資商品Aとリターンが10%の投資商品Bがあったとします。どちらの投資商品が優れていますか?

投資商品Aのほうがリターンが高いので投資商品Aの方が一見優れているように見えます。しかし正解は"これだけの情報では正確に判断できない"です。

投資商品Aと投資商品Bの同じ期間における値動きが以下のようなものだったとします。

191022kike1.png

リターンだけを見ると魅力的に思えた投資商品Aに対する印象も変わったのではないでしょうか? 値動きを見ると投資商品Aは大きく変動しており、投資商品Bは比較的安定しているのが直感的にわかります。

投資のリスクについて

ファイナンスでは、リターンの変動性をリスクと呼びます。ボラティリティと言うこともあります。シャープ・レシオを計算する上ではリスクをリターンの標準偏差とします。

上記の事例に戻り、仮に投資商品Aのリスクは20%、投資商品Bのリスクは5%だったとします。これは投資商品Aのリターンの標準偏差が20%、投資商品Bのリターンの標準偏差が5%ということなので投資商品Aの方がリターンの振り幅が大きい、すなわちリスクが高いということを意味します。

では、それぞれの要素を組み立てて、投資商品Aと投資商品Bのシャープ・レシオを計算し、どちらの方がリスクに見合ったリターンを獲得できたか評価してみましょう。

シャープ・レシオの計算

投資商品Aと投資商品Bのシャープ・レシオを計算するために必要な要素は下記のとおりです:

191022kike4.png

これらの要素をシャープ・レシオの数式に当てはめると、以下のとおりとなります:
シャープレシオ = (リターン - リスクフリーレート) / リスク(標準偏差)
投資商品AのSharpe Ratio = (15 - 1) / 20 = 0.7
投資商品BのSharpe Ratio = (10 - 1) / 5 = 1.8

投資商品Bの方が高いシャープ・レシオということになり、リスクに見合ったリターンが投資商品Aよりも高かったということが言えます。この結果は値動きのチャートを見たときの印象と整合しているのではないでしょうか?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

金現物、4500ドル初めて突破 銀・プラチナも最高

ワールド

イスラエル、軍ラジオを来年閉鎖 言論の自由脅かすと

ワールド

再送-ベネズエラが原油を洋上保管、米圧力で輸出支障

ワールド

豪NSW州で銃規制・ 反テロ法強化、乱射事件受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中