最新記事

企業

プロが絶賛する極上の音色 世界最高級ピアノができるまで

2019年10月17日(木)15時34分
南 龍太(ジャーナリスト)

じっくり時間をかけること

数多い部品、目玉の工程の1つに、ピアノの顔とも言える「ケース」を形作る作業がある。ケースはピアノの外側のことで、中でも「リム」と呼ばれるケースの側板が重要部位とされる。

水平方向に木目が走る薄いシート状の堅木メープル(カエデ)を幾層にも重ねる。その枚数はピアノの大きさに応じて14~20枚。熱や蒸気を使わず一気にプレスする「一体成形」で貼り合わせる。他社にないスタインウェイならではの製法で、「高音は繊細でいてクリア、低音は力強く温かみのある響き」とされる同社製ピアノ特有の音が生み出されるための肝心な工程だ。堅牢なリムがスタインウェイ製ピアノの特長とされる長寿命の秘訣だといい、さらに約6カ月乾燥させてじっくり仕上げる。

191015mi6.jpg

シート状の堅木メープル(右)を何層にも重ねる

191015mi7.jpg

リムの製造はピアノの音を決める大事な工程


内側に込める魂

普段は見えない内部も、一つ一つ手作業でパズルのようにはめ、つくり込んでいく。

弦の張力を支える強靭なプレートは、金色に塗装され、研磨され、ロゴが刻印される。鍵盤と連動するハンマーや、ロゴマークが刻まれたフレームも、鍵盤と共に順次ケースの中にはめ込まれる。こうして徐々にピアノらしい体裁が整っていく。

191015mi8.jpg

プレートが支える弦の張力は20トン以上に及ぶ

191015mi9.jpg

88ある鍵盤。個々に丁寧に包装されている

191015mi10.jpg

弦をたたくハンマーとロゴマークの入ったフレーム


脚を取り付け最終盤

ここまでくればピアノだと分かるだろう。ただ、脚はまだ取り付けられていない。代わりに、年季の入った鉄製の土台と棒がケース部分を支えている。

191015mi11.jpg

スタインウェイのペダルは3つあり、真鍮(ちゅう)製だ。音を持続させたり、音を弱めたりするのに使い分ける。

191015mi12.jpg

191015mi13.jpg

ペダルは真鍮製。完成前に赤いリボンで丁寧に封も(下)
今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

仏で緊縮財政抗議で大規模スト、80万人参加か 学校

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ワールド

アングル:9月株安の経験則に変調、短期筋に買い余力

ビジネス

ロシュ、米バイオ企業を最大35億ドルで買収へ 肝臓
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中