最新記事

ノーベル賞

ノーベル経済学賞は米大教授3氏に 貧困層の子どもたち支援した実践的取り組み評価

2019年10月15日(火)08時46分

スウェーデン王立科学アカデミーは14日、2019年のノーベル経済学賞をアビジット・バナジー氏、エステール・デュフロ氏、マイケル・クレマー氏の3人に授与すると発表した。写真は3氏の顔写真(2019年 ロイター/Karin Wesslen/TT News Agency)

スウェーデン王立科学アカデミーは14日、2019年のノーベル経済学賞をアビジット・バナジー氏、エステール・デュフロ氏、マイケル・クレマー氏の3人に授与すると発表した。3人はいずれも米国を拠点とし、貧困解消について理論よりも実践的な取り組みを優先して、数百万人の子どもを支援した功績が認められた。

デュフロ氏とバナジー氏はマサチューセッツ工科大学教授。クレマー氏はハーバード大の教授を務めている。

同アカデミーは、3人の研究成果によって貧困問題が教育や医療といった分野でより細かく、精密に分解された上で対処できると証明されたと指摘。具体的にインドの学校における個別の補習指導や、世界各国政府への予防的医薬品向け支出拡大の呼び掛けなどの取り組みを挙げた。

デュフロ氏は女性で2人目、また46歳と最年少での受賞。記者団の電話インタビューで「そもそも貧しい人たちが戯画化され、彼らを助けようとする人々でさえ、さまざまな問題が何に根差しているか理解していないという思いが、出発点としてある。われわれがやろうとしているのは『諸問題を1つ1つに細分化し、できるだけ綿密かつ科学的に解決する』ということだ」と語った。

また3人は、医療分野で使われている二重盲検法などの「ランダム化比較試験(RTC)」という研究方法をいち早く開発経済学に応用し、漫然と教科書の提供や無料給食を実施しても効果が少ない一方、本当に手助けが必要な生徒に的を絞った支援をすると、全体の教育水準が大きく改善することなどをフィールドワークで突き止めた。

バナジー氏は「今回の賞は単にわれわれだけでなく、こうした取り組み全体に贈られた」と強調した。

[ストックホルム 14日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡りトランプ氏との会談求める

ワールド

タイ・カンボジア両軍、停戦へ向け協議開始 27日に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 6
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 7
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中