最新記事

教育

10代の出産がもたらす、離婚と貧困のスパイラル

2019年9月25日(水)16時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

data190925-chart02.jpg

<図2>に見るように、10代で結婚した女子の離婚率は飛び抜けて高い。若くして出産した母と子が貧困に陥るリスクは高く、貧困の世代連鎖という結果にもつながる。足立区の中学校で、性交や避妊についてやや踏み込んだ授業をしたのは、こういう問題を意識してのことだったのかもしれない。「要らぬ性的関心を助長する」という批判もあったが、結果はその逆で、安易な性行動に慎重になる生徒の率が大幅に増えたということだ。

各学校は学習指導要領に依拠してカリキュラムを編成することになっているが、それを消化した上で、プラスアルファの内容を指導することは認められる。東京都は『性教育の手引き』を改訂し、学習指導要領の範囲を超える内容も指導できるようにした。

正しい知識がないばかりに、望まない妊娠・出産に至ってしまうケースが後を絶たない。「性行為をしても、その日のうちに熱いお風呂に入れば大丈夫」などと、本気で信じてしまう生徒もいる。ネットでもこの種のデマが飛び交っている。

ネットが普及した現在では、児童生徒が性の情報(刺激)に触れるのは容易い。子どもと大人の世界は完全にボーダレスだ。青少年にスマホを買い与える場合は、有害情報を遮断するフィルタリングの措置をすることになっているが、この規則を守る親はほとんどいない。

こういう時代だからこそ、学校で正しい知識を教える必要がある。身体や生理に関することだけでは不十分で、自分や相手を尊重し、思いやる態度の育成も欠かせない。1999年の世界性科学学会「性の権利宣言」では、包括的性教育の概念が提起されている。「自らの健康・幸福・尊厳への気づき、尊厳の上に成り立つ社会的・性的関係の構築、個々人の選択が自己や他者に与える影響への気づき」を促すことを目指す(日本女性学習財団「キーワード・用語解説」)。デートDVなどが頻発していることを思うと、こうした考え方での教育も重要であることは明らかだ。

<資料:東京都『人口動態統計年報』(区市町村別)
    厚労省『人口動態統計』
    公益財団法人・日本女性学習財団「キーワード・用語解説」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中