アマゾン火災 熱帯雨林が燃えても「酸素は大丈夫」
How Much Oxygen Does the Amazon Rain Forest Provide?
先住民が暮らすブラジル・モトグロッソ州の森林火災(8月25日) Marizilda Cruppe/Amnesty International/REUTERS
<主流メディアやセレブが地球全体の20%の酸素供給源が危ない、と叫んでいるが、問題はそこではない>
このところ広く注目を集めているアマゾンの森林火災。世界最大の熱帯雨林アマゾンのおよそ60%があるブラジルで、今年は森林火災が異常に多く発生しているとの報道に危機感が高まっている。
こうしたなか、多くのメディアや慈善団体、寄付を申し出るセレブ、さらにはG7に集まった各国の首脳までが、繰り返し主張している数字がある。アマゾンの森林が地球の酸素供給量の20%を占める、というものだ。アマゾンが燃え尽きれば、地球は酸素不足になる、というニュアンスで使われる。
本当なのか。
専門家によれば、実際の数字ははるかに低い。地球の酸素量におよぼすアマゾンの影響を考えれば、酸素不足の危機をあおるのはミスリーディングだ。
「ソーシャルメディアでは20%という数字が一人歩きしているが、あまり意味がない数字だ」と、アリゾナ大学のスコット・サレスカ准教授は本誌に語った。「森林火災を恐れるべき理由はいくつもある。だが世界の酸素供給へのリスクは、それに含まれない」
実際、ブラジルの国立アマゾン研究所のフィリップ・ファーンサイド教授によると、地球の酸素量は非常に安定しており、アマゾンのジャングル頼みではない。森林は酸素を生産すると共に消費もするので、長期的に見ればプラスマイナス・ゼロになるという。
<参考記事>アマゾンのジャングルに1人暮らす文明と接触のない部族の映像を初公開
「主流のメディアが、世界の酸素の20%はアマゾンの森林でつくられると報道しているのを見て驚いた」と、ファーンサイドは本誌に語った。「アマゾンは酸素の主要な供給源ではない。木も動物と同じように呼吸するからだ。木は生み出す酸素の大半を消費する」
大気中の酸素量は安定している
植物の光合成では、太陽エネルギーを使って空気中のCO2(二酸化炭素)から糖類が合成され、その副産物として酸素が生まれる。
「木が成長していて、幹などに炭素を蓄えている時期には、一定量の酸素が放出される。だが木が枯れ、幹が腐れば、それと同量の酸素が、幹に含まれる炭素と結びついてCO2になる」と、ファーンサイドは説明する。
「酸素供給量のほうが多くなるのは、光合成で蓄えられた炭素が、酸素と結びついてCO2にならないような環境に枯れ木が埋まった場合だけだ。地球全体で見ると、こういうことが起きる主要な場所は海底だ。海では、死んだ有機物の一部が底に沈み、堆積層に埋もれる」
結局、アマゾンが地球の大気に放出するネットの酸素量は「ほぼゼロ」になると、サレスカは言う。木々を成長させる光合成の効果は、微生物による枯れ木や落ち葉の分解でほとんど相殺されるからだ。
「大気中の酸素の割合は20.95%で、おおむね一定している」と、サレスカは話す。「アマゾンの木々が燃えても、大気中の酸素量には大した影響はない。CO2については、話は別だが」
<参考記事>燃えるアマゾン、融けるグリーンランド 2人のデタラメ大統領が地球を破壊する
サレスカによると、大気中の酸素量は1990年以降、0.005%低下しただけで、ほぼ問題にならない。
「(0.005%の低下は」科学的には検出可能で、非常に興味深い、有用な数値だが、現実生活では無視していい。低下の原因は(おもに)化石燃料を燃やしたことだが、そのほぼ10%が世界中の森林伐採に伴い枝葉が燃やされていることによる。多めに見積もった割合だ。もしアマゾンの森林破壊が世界の森林破壊の半分を占めると仮定すれば、アマゾンの森林破壊によって減る酸素減少量は全体の0.005%のうちのさらに5%ということになる」