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「ポスト平成」におけるフランチャイズ化の行方

2019年8月8日(木)14時00分
待鳥聡史(京都大学大学院法学研究科教授) ※アステイオン90より転載

政治の世界に目を転じれば、地方政治の自律性の強まりや地域政党の出現は、過去三〇年の最も注目すべき変化であった。この動きは、まず九〇年代に既成政党の支持や支援を受けない無党派首長の登場として顕在化した。東京都知事に青島幸男、大阪府知事に横山ノックが当選したのは、九五年のことであった。既成政党を否定するところに重点があった無党派首長は、次には既成政党へのオルタナティヴを目指す地域政党に立脚した首長へと代わっていく。二〇〇八年に橋下徹が大阪府知事になり、その後に大阪維新の会を結成したのは、その代表例である。

制度的には、中央政府と地方自治体の関係を変化させる地方分権改革がなされたことも、このような変化を後押しする効果を持ったであろう。地方分権改革は、九三年の衆参両院による「地方分権の推進に関する決議」を起点とすることが多く、平成期における政治改革の重要な一要素であった。今日に至るまで不十分であるという批判は受け続けているが、地方自治体への権限や財源の移譲は広範に進められ、自治体ごとの政策の差異も拡大傾向にある。

かくして、過去三〇年の間にフランチャイズ化の傾向は明確になり、中央集権化や社会的画一化こそが望ましいという価値観は、現在の日本にはほとんど存在しなくなった。明治の廃藩置県から少なくとも高度経済成長期まで、一〇〇年以上にわたり追いつき型近代化を国家的目標に定め、そのための最も効率的な方法として集権化と画一化を追求してきたことを考えれば、この変化は一般に思われているよりも遥かに劇的である。

しかし、ここまで述べてきたような動きが、価値観としてではなく実体的な面で地方や地域の活力を生み出しているかといわれれば、疑問を抱かざるをえない。フランチャイズ化の三〇年は、東京独り勝ちの三〇年でもあったように思われる。確かに、名古屋圏や大阪圏などには経済が好調な時期があるが、それでも東京圏との差は拡大する一方である。それ以外の地域となると、事情はいっそう芳しくない。

そうなったのはなぜだろうか。社会における価値観の変化と政治行政による政策的な後押しが行われているのに、東京圏を筆頭とする大都市圏以外の地域は全般的に活力を低下させている理由としては、大きく二つのことが考えられよう。

一つは、少子高齢化の影響である。東京圏への人口流入は、基本的には若者をはじめとする生産年齢人口の流入であり、これが地方の活力を奪う。東京都に神奈川県・千葉県・埼玉県を加えたエリアは、出生率で見る限りは少子化が他の地域より顕著なのだが、人口流入によってそれを補っている。とりもなおさず、それは東京圏以外で育った若者が移り住み、地方には高齢者のみが残されるということである。

価値観としてのフランチャイズ化にもかかわらず、とくに非大都市圏には雇用や高等教育の機会が十分にない。少なくない若者が、地方に住み続けたくともできないのが実情なのである。現在、地方創生の名の下に、大都市圏の大学の定員管理厳格化などが行われているが、たとえば「行きたい学部がない」といった状況が解決するわけではないので、その効果は限定的に止まらざるを得ない。

もう一つには、社会経済の活動単位と政治行政の活動単位が整合しないために政策が打ちづらい、あるいは政策の効果が表れにくいという問題、すなわち圏域問題が発生していることが指摘できよう。

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