ソーラーセイル実証機「ライトセイル2号」が太陽光で地球周回軌道航行
ライトセイル2号から撮影された地球 The Planetary Society
<ライトセイル2号は、ソーラーセイルを推力として地球周回軌道を航行することに成功した世界初の宇宙船となった......>
国際非営利団体(NPO)の惑星協会が開発したソーラーセイル実証機「ライトセイル2号」が、2019年6月25日、スペースXの大型ロケット「ファルコンヘビー」に搭載され、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。
ソーラーセイルを推力として地球周回軌道を航行に成功
ライトセイル2号は、7月23日、地球周回軌道上でソーラーセイル(太陽帆)を展開させ、7月31日、太陽光だけで軌道の遠地点を2キロメートル上昇させることに成功した。
その後も太陽光によって順調に航行し、8月5日には軌道の遠地点を3.2キロメートル上昇させ、地球との距離が729キロメートルに達している。
光子がソーラーセイルにあたって推力に
ライトセイル2号は、ソーラーセイルを推力として地球周回軌道を航行することに成功した世界初の宇宙船であり、地球から打ち上げられたソーラーセイル実証機としては、2010年5月21日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって打ち上げられた小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス(IKAROS)」に続いて2例目となる。
ソーラーセイルとは、反射材でできた巨大な帆で太陽の光を反射させ、推力に変えるというものだ。光は、エネルギーと運動量を運ぶ光子(フォトン)と呼ばれる粒子でできており、光子がソーラーセイルにあたって跳ね返ると、運動量の多くが伝達され、光が反射した方向と逆方向へ加速する。化学ロケットに比べると推力は小さいものの、途絶えることはなく、時間の経過とともに速度を上げることができる。太陽光を無限に活用できるのも利点だ。
1年後、大気圏に再突入して燃え尽きる見込み
ライトセイル2号のソーラーセイルは、電気の絶縁材料であるマイラー(テレフタル酸ポリエステル)をアルミで被覆したもので、4枚の三角形をつなぎ合わせることで、ボクシングリングと同サイズの32平方メートルの正方形をなす。
制御システムがライトセイル2号の方位をコントロールしており、8月3日には、地球の影に入るとソーラーセイルモードから自動で切り替わる機能も実装された。ソーラーセイルを展開した7月23日以降の10日間で、ライトセイル2号がソーラーセイルモードで航行した時間は、全体のおよそ3分の2を占めている。
ライトセイル2号は、軌道を上昇させるミッションを1ヶ月間、実施したのち、およそ1年かけて徐々に軌道を外れ、大気圏に再突入して燃え尽きる見込みだ。ライトセイル2号の航行状況は、惑星協会の公式ウェブサイトでリアルタイムに公開されている。