アメリカの顔認証ゲート......顔写真データは盗難、通過できない客も続出
米国の空港で顔認証システムの導入が進んでいるが...... Thomas Peter-REUTERS
<アメリカの空港で導入が進む顔認証だが、登場手続きがうまくいかなかったり、顔写真データが盗まれたりと、ちょっとしたトラブルが続いている......>
米国では数年以内に、出国する旅客の97%に対して顔認証システムによるチェックが実施されるようになる見込みだ。米国土安全保障省(DHS)は、このシステムは98%の一致率を誇り、不法滞在者摘発などに役立つとしている。
顔認証システムは政府だけでなく、民間企業の間でも採用が進んでいる。米Washington Postのジェフリー・ファウラー記者は6月10日、米航空会社JetBlueの顔認証による登場手続きシステム「e-gate」を体験した記事を公開した。
旅客の15%がうまく通過できなかった
JetBlueは、このシステムにより搭乗手続きが簡易化でき、旅客のストレスを減らせるとしている。旅客はゲートにあるカメラをのぞき込むだけで、ボーディングブリッジに進める。仕組みは、ゲートにあるカメラで撮影した顔写真を、DHSが提供するパスポートやビザの渡航情報のデータと照合するというものだ。
撮影された写真は、一定期間(出国の場合、米国民は12時間、それ以外は2週間)保存された後、破棄される。
ファウラー記者はニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港のe-gateで取材した。自身で10回ゲートを通ってみたところ、サングラスを装着した状態を含めてすべて通過できたが、2便分の搭乗をチェックしたところ、旅客の15%はうまく通過できなかった。
JetBlueは、うまくいかない原因として、カメラに顔を向ける時間が短かすぎたり、ひげが生えるなどで照合元の写真と著しく見た目が変わっているケースを挙げた。
顔認証がうまくいかなかった乗客は、結局人間に自分のパスポートを見せることになり、二度手間だ。
自分の顔データを提供した上に手間が増える可能性があることをいとうのであれば、顔認証以外のプロセスをリクエストすることも可能だ。
サイバー攻撃で米国を入出国した旅客の顔写真が盗まれた
本誌米国版によると、企業によるものだけでなく、米連邦政府の顔認証プログラムも、米国民の権利として拒否できるという。その場合は、パスポートの提示などの従来の手続きを行うことになる。
折しもこの記事が公開された同じ日に、国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)が、下請け業者へのサイバー攻撃により、米国を入出国した旅客の顔写真と車のナンバープレートの写真データが盗まれたと発表した。規模は不明だが、流出した個人データは取引され、悪用される可能性がある。
JetBlueは2017年にe-gateのパイロットプログラムを開始した際、将来的には顔認識技術を使って旅客へのサービスをパーソナライズしていきたいと語っていた。それは便利かもしれないが、その便利さと危険性を天秤に掛けると、今のところ積極的には利用したくはない旅客が多そうだ。