銃乱射でPTSDを受けるアメリカの医師たち 銃反対運動が救いに
倫理的なけが
医療現場は長年、燃え尽き症候群の影響を受けてきた。一部の医師が「倫理的な負傷」と呼ぶこの症状は、自分自身との断絶や、感情の疲弊、達成感の低減などを感じること、と定義されている。
また、自分が代わりに外傷を受けたように感じたり、同情疲れなどの症状が出ることもあり、これらは看護師や他の手術室スタッフ、救急隊員など、外傷治療に携わる全ての医療関係者が経験し得るものだ。
外傷外科医の40%にPTSDの兆候が出ており、15%はPTSDの診断基準を満たしていると、2014年の米国外傷外科学会の学会誌による調査は指摘している。
これは、退役軍人省が報告した15.7%に上るイラクやアフガニスタンの従軍兵のPTSD該当者に匹敵する数字だ。
医学誌によると、400人の医師が毎年自殺しているが、これは1大学の医学部1学年に相当する数だ。
近年では、兵士や記者、その他の医療関係者が、悲劇的な出来事を目撃したことによる精神的な影響に対して、よりオープンに立ち向かうようになっている。だが、外科医は遅れている。
「彼らは、もう無理だ、精神的に限界だ、と口にする最後の人々になるだろう」と、ニューヨークにあるイエシバ大学のナンシー・ベッカーマン教授は指摘する。
ニュージャージー州のルトガーズ大病院の外傷外科医で活動家でもあるステファニー・ボン医師は、手術室で外傷を見ることで、ニュースで銃撃事件が報じられると同時に被害者搬入を知らせる呼び出し音が鳴るなどの日常のストレスがさらに増していると話す。
「どんなに現状に立ち向かおうと努力しても、次々と患者が運び込まれ続けることに、無力感がある」と、ボン医師は話した。
Daniel Trotta
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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