中国の逆襲「レアメタル」カード
アメリカはどうするのか?→北朝鮮になびくか?
中国以上にレアアースを含めたレアメタルの埋蔵量が多い国が、地球上に一つだけあると言われている。北朝鮮だ。埋蔵量であって、生産量ではない。
2018年6月11日付のコラム「北朝鮮を狙う経済開発勢力図」に書いたように、種類によっては中国の10倍以上の埋蔵量があるレアメタルもあると予測されている。もっとも、中国は月面のヘリウム3に目を付けるように、「資源」となると、真っ先に飛び付くので、北朝鮮の埋蔵地のいくつかは、既に中国が50年間の使用権とか30年間の発掘権などを所有しているが。
それでもなお、中国から禁輸されれば、アメリカは北朝鮮になびく可能性がある。
アメリカの地質調査所(USGS)のデータによれば、昨年の世界レアアースの生産量は17万トンで、中国12万トン、オーストラリア2万トン、アメリカ1.5万トン、ミャンマー5000トン、ロシア2600トンと、中国が全世界の70%を占めている。
しかし埋蔵量の多い国に関しては、中国以外にブラジル、ベトナム、ロシア、インド、オーストラリアなどがある。北朝鮮の場合は、正確なデータが出て来ないものの、国交を結んでいる国がほとんどなので(世界中で日米韓など数カ国だけが国交なし)、これまでに一定のデータははじき出している。それによれば、中国を遥かに超えるだろうと言われているので、米朝関係がどう動くかで、アメリカのレアアースに関する危機管理が方向づけられていく。
アジアに又ひとつ、大きな地殻変動が起きるだろう。中国には米朝を近づけたくはないという複雑な心理もうごめいている。
中国が対米レアメタル輸出規制を発動するか否かは、世界の動向を左右する大きな変数となる。
習近平の「江南視察」というゴーサインの下で全てが動いているということが、考察のカギだ。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
追記:中国は2010年の尖閣諸島問題発生の後、日本に「レアアース」カードを切ったが、失敗に終わっている。対中依存度を低めたのと、WTOが協定違反とされたことなどが主たる理由だ。今回はアメリカの高関税もWTO違反だと中国は言っているし、アメリカのハイテクや軍事産業へのレアメタル対中依存度は日本と比べものにならないほど大きい。しかし何と言っても日本は近年、小笠原諸島・南鳥島の沖合5500メートルの海底にレアメタルが埋蔵していることを確認している。早期開発と実用化に期待したい。
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