最新記事

北朝鮮

金正恩はトランプに会うとき英語が不安だった──元側近

Kim Jong Un Was Nervous About Bad English Skills Before Trump Meeting: Aide

2019年5月21日(火)16時20分
デービッド・ブレナン

心なしか目が泳いでいる?金正恩(ハノイで2度目の米朝首脳会談に臨む金) Leah Millis-REUTERS

<昨年から2度にわたって行われた米朝首脳会談で穏やかな笑顔を見せていた金正恩は、トランプの英語をわかっていたのか、わかっていなかったのか>

アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が2018年6月にシンガポールで歴史的な首脳会談を行うことになったとき、会談直前まで世界中で密かに話題になっていたのは、金の英語力の問題だった。

韓国の文在寅大統領の元側近は、若き独裁者の金は、英語力にあまり自信がなく、不安を覚えていたようだと明かす。

韓国英字紙コリア・タイムズは、文政権で大統領儀典秘書官室行政官を務めたタク・ヒョンミンが、韓国・京郷新聞のインタビューに答えた、と報道。それによると、米朝会談に先立つ2018年4月27日、韓国との軍事境界線がある板門店で開かれた南北首脳会談で金は文に対し、自身の英語力が心配だと言ったという。

「英語に自信がないので心配だ」と、金は文に言ったという。30分にわたる雑談のなかで金は、「ドイツ語は得意」だが、英語は得意ではないと話していた。

金正日朝鮮労働党委員長を父とするほかの子どもたち同じく、金もスイスに何年か住んでいた経験がある。当然英語も学んだが、思ったほど身につかなかったようだ。金はその後、2000年代はじめに北朝鮮に戻ったと考えられている。

ロッドマン「断片的には理解している」

金とトランプは、シンガポールに続いて2019年2月にベトナムのハノイで2度目の米朝首脳会談を行った。いずれの場合も両首脳にはつねに通訳が付き添った。シンガポールでの初会談が近づくなか、メディアは金の英語力について、堅苦しくない会話はできても、複雑な外交交渉をこなすには十分ではないのではないかと報じていた。

米プロバスケットボール(NBA)の元選手デニス・ロッドマンは、北朝鮮を訪れ、金やその父、金正日とかなりの時間を共にしたことがあるが、シンガポールでの首脳会談開催中にCNNの取材に応じ、金について「(英語での会話を)断片的に理解している。バスケットボールの話であれば、きちんとわかっている」と語った。

専門家は、金とトランプの会談においては、通訳がこれまでになく重要であると指摘した。金は英語力が弱点である一方、トランプはすぐに本筋から脱線する癖があるからだ。

金はどちらの会談でも予想以上にうまく振る舞ったようだ。たとえば、ハノイでの夕食会についてトランプが報道陣に語った内容を、金は理解していたと思われる。トランプが前夜の夕食会について、「素晴らしいアイデアが飛び交った」と高く評価すると、金は笑顔を浮かべてうなずいていた。金のそうした好意的な様子は、トランプが両国の関係を「きわめて強固で良好」だと評したときも変わらなかった。

そして、その後に開かれた首脳会談で「非核化」について意見が分かれ、トランプが「交渉は終わりだ」と席を立ったときは真っ青だったというのだから。

(翻訳:ガリレオ)

20190528cover-200.jpg
※5月28日号(5月21日発売)は「ニュースを読み解く哲学超入門」特集。フーコー×監視社会、アーレント×SNS、ヘーゲル×米中対立、J.S.ミル×移民――。AIもビッグデータも解答不能な難問を、あの哲学者ならこう考える。内田樹、萱野稔人、仲正昌樹、清水真木といった気鋭の専門家が執筆。『武器になる哲学』著者、山口周によるブックガイド「ビジネスに効く新『知の古典』」も収録した。


20250401issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月1日号(3月25日発売)は「まだ世界が知らない 小さなSDGs」特集。トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中