最新記事

宇宙

世界初、ネコの宇宙葬が行われることに...名前はピカチュウ

2019年5月13日(月)15時40分
松岡由希子

飼い主さん、さようなら...... Sonsedska-iStock

<ペット向け宇宙葬サービス「セレスティス・ペッツ」で、いよいよ飼い猫の宇宙葬が行われる見通しとなった>

2018年12月3日、約100人の遺灰を乗せた追悼用人工衛星「エリジウム・スター2」が、米カリフォルニア州ヴァンテンバーグ空軍基地から打ち上げられたスペースXのロケット「ファルコン9」によって低軌道に送り込まれた。故人の遺骨などを納めたカプセルをロケットに乗せて宇宙空間におくる「宇宙葬」が新たな散骨のひとつとして本格的に実用化されつつある。

猫の宇宙葬約54万円、クラウドファンディングを実施

そして宇宙葬はペットにも活用されはじめている。宇宙葬サービス専門企業セレスティス傘下のペット向け宇宙葬サービス「セレスティス・ペッツ」では、飼い犬の宇宙葬に続き、いよいよ飼い猫の宇宙葬が行われる見通しとなった。

ペットの遺灰を詰めた容器を地球周回軌道に送り込み、大気圏に突入して燃え尽きるまで地球からその現在地を追跡できる仕組みだ。このペット向け宇宙葬サービス「アース・オービット」の費用は4995ドル(約54万8260円)から設定されている。

米オレゴン州に在住するスティーブ・ムント氏は、クラウドファンディングサービス「ゴー・ファンド・ミー」を通じて、2019年1月に死亡した愛猫ピカチュウの宇宙葬のための資金を募り、5月13日までに2220ドル(約24万3670円)の寄付が寄せられた。"冒険者"のような性格だったピカチュウを偲び、「これまでネコがたどり着いたことのない場所におくりたい」との思いから、ムント氏は、すでに「セレスティス・ペッツ」に申し込み、費用を全額支払っている。

ムント氏は、宇宙ニュース専門メディア「スペース・ドットコム」の取材に対し、「ピカチュウの宇宙葬のための寄付は引き続き受けていくが、資金集めが本来の目的ではない。今後の寄付の多寡によらず、私の夢は叶いつつあり、近い将来、実施される打ち上げを楽しみにしている」とコメントした。

遺灰を月におくるサービスも

「セレスティス・ペッツ」では、このほか、ペット向け宇宙葬として、ペットの遺灰を詰めた容器を宇宙空間におくって無重力状態を体験させたのち、地上で回収して家族のもとにかえすサービス「アース・ライズ」や、遺灰を月におくる「ルナ」、地球の大気圏外の宇宙空間におくる「ボイジャー」といったサービスも展開している。

2018年度の全米ペットオーナー調査によると、米国では8500万世帯がペットを飼っており、その割合は1988年時点の56%から30年で68%に上昇している。宇宙技術の進歩によって可能となったペット向け宇宙葬は、ペットの旅立ちを偲ぶ新たなサービスとして、今後、一定の需要が見込まれそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で

ビジネス

米相互関税は世界に悪影響、交渉で一部解決も=ECB

ワールド

ミャンマー地震、死者2886人 内戦が救助の妨げに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中