最新記事

米予算

フォーチュン100社への米政府支払い、4年で44兆円

Fortune 100 Companies Received $399 Billion in Federal Funding Over 4 Years

2019年5月8日(水)15時40分
ダニエル・モリッツラブソン

米軍需産業や製薬業界は連邦予算から巨額のビジネスと補助金を得ている  Jim Young-REUTERS

<なかでもロビー活動に熱心な軍需企業と製薬企業は補助金も含めて多額の支払いを受け、浪費されている>

米政府支出の透明性を監視する団体オープン・ザ・ブックスの報告書によると、2014から2017会計年度にかけての4年間に、フォーチュン100企業に支払われた米連邦政府の予算は3990億ドル(約44兆円)に達することが判明した。

報告書によると、フォーチュン100リストの上位10社だけで、調査対象になった4年間に3380億ドルにのぼる連邦政府の予算が支払われたという。総額3990億ドルの大半を占める3930億ドルは請負契約に伴う支払いだが、これとは別に、32億ドルに上る政府補助金が交付されている。報告書はさらに、巨額の政府予算を受け取っているこれらの企業が、かなりの金額をロビー活動に費やしていると指摘した。

なかでも高額の政府予算を受け取っているのが、軍需および医薬品産業だ。ロッキード・マーティンへの予算支払額は1380億ドル近く、ボーイングは820億ドル以上に達する。製薬のマケッソンは301億ドル超、医療サービスのヒューマナは138億ドル近くの補助金を、連邦政府から受け取っている。

消費者の権利擁護を訴える市民団体パブリック・シチズンのロバート・ワイスマン会長は本誌の取材に対し、この報告書は公金のムダ使いを明らかにしただけでなく、軍事関連分野にどれだけ巨額の政府資金が投入されているかを示したものだと、意義を強調した。さらにこの調査は「膨れ上がった軍事予算のかなりの部分が軍需企業に流れている事実」を明らかにしたと述べた。「軍事予算は大幅に縮小できるという批判に我々も同意する」

ロビー活動は壮大な無駄の元

シンクタンクの「予算・政策優先研究センター(CBPP)」によると、連邦政府が2017会計年度に防衛および国際治安維持活動に費やした金額は、全予算の15%にあたる6110億ドル。パブリック・シチズンのワイスマンは、オープン・ザ・ブックスによる今回の報告書は、政府支出の決定メカニズムという、より広い視野の中で捉えるべきものだと指摘した。

「これらの企業は、政府に自社の製品やサービスを購入させるためにロビー活動をしている。そのため国防分野では、必要もない武器や失敗作に巨額の予算が費やされている」とワイスマンは述べた。

オープン・ザ・ブックスは定期的に政府支出の調査を行い、年度末の予算消化などのムダな出費に関する報告書を公開している。

一方で、オープン・ザ・ブックスの創設者でCEOを務めるアダム・アンジェフスキーはワシントン・タイムズ紙の取材に対し、以下のように述べた。「こうした支出の多くが、公益性のある正当なものであることも事実だ。ジェット戦闘機や原子力潜水艦が必要な場合は、そうした兵器を製造している企業から購入するしかない」

(翻訳:ガリレオ)

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中