国際秩序を脅かすアサンジは法で裁かれるべきだ
Julian Assange: A Life Above the Rule of Law
アサンジは、イギリスの法執行機関の行動は「違法」だと主張している。これは、ルールを適用するとき、しないときを自分の都合で身勝手に決めてきたアサンジのやり方からすると、皮肉中の皮肉といえるだろう。
アメリカ、スウェーデン、およびイギリス政府は7年以上に渡って国際的な法制度への忍耐と尊重を示したことを称賛されるべきだ。アサンジの行為が2016年の米大統領選挙をゆがめたこと、そしてドナルド・トランプ大統領がウィキリークスに対して「愛」を告白したことを考えると、アメリカの法執行機関にとって米政府との連携はやりにくいものだったに違いない。
アサンジの行為は、個人の力で、デジタルセキュリティの多くの隙間を悪用することができることを実証している。現代史において、危害を引き起こす能力を有する個人や比較的力の弱い国家、非政府犯罪組織(NGO)などからの攻撃に対して、今ほど国家が弱い存在になったことはない。
これまで国家は、総合的な力を持っていた。技術的な進歩を導き、船舶や戦車、航空機を生産したのは産業界でも、それらを所有し、運営し、総力を結集させるのは政府だった。そして権力をいつ、どのように使うかを決めたのも政府だった。
金で動くサイバー戦士の脅威
今日、個人やテック企業は、その能力と総合的な技術的手腕において、政府をはるかに凌いでいる。真っ先に適応しているのは犯罪者だ。そしてテック企業はサイバーセキュリティにおいて、政府と協力するにせよ、敵対するにせよ、対等の立場にある。
ニューヨーク・タイムズが3月21日に掲載した「新時代の戦争:インターネットの傭兵はいかにして権威主義的な政府と戦うか」によれば、世界で最も優れたサイバー戦士の一部がみずからのスキルを自由市場で合法的に民間企業に売却している。そのおかげで、強国とはいえない国々が世界の舞台できわめて高度なサイバー国家として振る舞うことが可能になっているという。
こうしたサイバー戦士のなかには、次のジュリアン・アサンジのような人々と手を組み、デジタルの「暴露屋」に協力する連中もいるはずだ。
国内外のいかなる法制度によってアサンジが裁かれるにせよ、これまでの彼の行動は法の支配と民主的な統治システムの対極にあるものだった。アサンジは自分が逆らい、無視した法の保護を与えられる。これはきわめて重要なことだ。
望みうる最善の結末は、裁判の過程でアサンジの居場所は法廷に他ならない、と彼の崇拝者が悟ることだ。それ以外の結末では、アサンジを崇拝し、国際的なシステムは不正だらけで、アサンジのやり方が抵抗の唯一の方法だと思い込む者がなくならないだろう。
(翻訳:栗原紀子)
The article first appeared on the Atlantic Council site.
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