最新記事
進化

四本足のクジラの祖先が南米ペルーで初めて見つかる

2019年4月8日(月)17時30分
松岡由希子

ペルーで初めて見つかった4本足のクジラの祖先 (Alberto Gennari/Cell Press)

<ベルギーの生物学者がペルーの太平洋岸で、保存状態が良好な四本足のクジラの骨格を発掘し、その分析結果を発表した>

クジラは、5000万年以上前にインドやパキスタンといった南アジアでオオカミより小さな偶蹄目から進化して生まれている。そして、その一部が水にも適応して、水中と陸上との両方で活動するようになり、生息地は次第にアフリカ北部へと広がり、4120万年前までには大西洋を横断して北米に上陸したとみられている。

そしてこのほど、太平洋岸の南米ペルーで初めて、4260万年前のクジラが四本足であったことを示す化石が発見された。

ビーバーやカワウソのような水陸両用哺乳動物と同様の尾椎

ベルギー王立自然史博物館の古生物学者オリバー・ランベルト博士を中心とする国際研究チームは、2011年にペルーの太平洋岸ピスコ盆地のプラヤメディアルナで保存状態が良好な四本足のクジラの骨格を発掘し、2019年4月4日、その分析結果を学術雑誌「カレントバイオロジー」で発表した。

「ペレゴゼタス・パシフィカス(太平洋にたどり着いたクジラ)」と呼ばれるこの化石は南北米大陸で最古となる4260万年前のもので、インドとパキスタン以外の地域で発掘された化石の中では、最も完全に近いものだという。

長さ3.4メートルから4メートルの「ペレゴゼタス・パシフィカス」は、ビーバーやカワウソのような水陸両用哺乳動物と同様の尾椎を持っており、体の後部を波打つように動かして水中での推力を得ていたとみられている。

gr2_lrg.jpg

Olivier Lambert

また、骨盤が仙骨にしっかりと固定されていることから、自重を十分に支え、地上を這うことができたようだ。前肢と後肢のバランスはインドやパキスタンで発掘された「ペレゴゼタス・パシフィカス」の祖先と非常によく似ており、つま先や指には小さな蹄の跡も確認されている。

Indohyus_model.jpg

インドハイアス(Indohyus)約4,800万年前に南アジアで棲息していた半水棲の原始的哺乳類 (Ghedoghedo/Wikimedia Commons/CC BY-SA)

どんな道のりで南米大陸にたどり着いたのか....

南アジアを起源とするクジラが、どのように進化しながら、いつ、どんな道のりをたどって、アフリカ北部から大西洋を渡り、南北米大陸にたどり着いたのかについては、いまだ明らかになっていないことも多い。

「ペレゴゼタス・パシフィカス」は、クジラが南大西洋を渡って南北米大陸に分散したことを示す証のひとつとして評価されており、今後、この謎を解明する手がかりとなると期待が寄せられている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に

ビジネス

トランプ氏、8月下旬から少なくとも8200万ドルの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中