最新記事

顔認証

アメリカの空港で全面導入が進む顔認証システム プライバシー懸念も

2019年4月24日(水)16時30分
佐藤由紀子

中国の顔認証システムを提供する企業のデモ(2017年) 米空港のものとは別 Bobby Yip-REUTERS

<米国土安全保障省(DHS)は、4年以内に米国から出国する旅客の97%に対し、顔認証システムによるチェックを実施する計画を発表した>

保有するデータベース内の顔写真と照合

米国土安全保障省(DHS)が、向こう4年以内に米国から出国する旅客の97%に対し、顔認証システムによるチェックを実施する計画を発表した。

この顔認証システムは「Biometric Air Exit」と呼ばれ、DHSの税関・国境警備局(CBP)が2016年に最初の1台をアトランタ国際空港の出国ゲートに設置した。2018年末時点で15の空港に設置されている。

旅客は出国ゲートに設置されているカメラで顔写真を撮影される。その写真をCBPが保有するデータベース内の顔写真と照合することで、本人確認する。このデータベースはパスポートとビザから読み取った顔写真で構成されている。非米国民については、不法な長期滞在者などの摘発に役立つとしている。

このシステムはこれまでに200万人以上の旅客の顔を照合しており、その完全一致率は98%だという。そして、この間累計で7000人の不法長期滞在者と、偽造パスポートを使っていた6人の摘発に役立ったという。

懸念されるプライバシー上のトラブル

DHSは、Biometric Air Exitの利用に当たっては既存のプライバシー法および規制を順守しており、定期的にプライバシー影響評価(PIA)を公開して透明性の維持に努めていると主張する。

セキュリティにも十分注意を払っており、顔を撮影するカメラとデータベースを繋ぐネットワークは暗号化されており、システムにアクセスするには二段階認証システムを採用しているという。また、撮影した顔写真は、照合完了後12時間以内に削除している(Q&Aより)。

顔認証は身近なところではAppleの「iPhone」の「Face ID」やMicrosoftの「Windows Hello」など、デバイスのロック解除などで便利に使えるツールとして普及してきている。

また、コンビニでの顔認証による買い物や定期券などの物理的なカードが不要な"顔パス"による改札などの取組も進んでいる。

誤認逮捕などにつながる?

一方で、プライバシー法に準拠した使い方が守られるかどうか、また、正確さはまだ100%ではないため、誤認逮捕などにつながるのではないかという懸念もある。Amazonの顔認証システム「Recognition」については、マサチューセッツ工科大学(MIT)が性別の誤認識が多いという調査結果を公開した。

Amazonが米警察当局に「Rekognition」を提供していることについては、人権団体のアメリカ自由人権協会(ACLU)がプライバシーを侵害するおそれがあるとして抗議している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英BP、カストロール株式65%を投資会社に売却へ 

ワールド

アングル:トランプ大統領がグリーンランドを欲しがる

ワールド

モスクワで爆弾爆発、警官2人死亡 2日前のロ軍幹部

ビジネス

日経平均は4日ぶり小反落 クリスマス休暇で商い薄く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中