最新記事

皇室

平成から令和へ──200年ぶりの天皇譲位 皇室を知る7つのポイント

2019年4月30日(火)13時00分

日本の皇室の歴史上、ほとんどの期間において、天皇は直接的な政治権力を持つことはなく、象徴的かつ宗教的な存在だった。写真は退位を前に伊勢神宮を内宮を参拝された天皇陛下。4月30日、三重県伊勢市で撮影(2019年  ロイター/Issei Kato)

現在85歳の天皇陛下は4月30日に退位し、59歳の皇太子さまが翌5月1日午前0時に新天皇に即位する。天皇の譲位は約200年ぶりとなる。

日本の皇室や天皇制度について知っておくべき7つのポイントをまとめた。

●初代天皇とされる神武天皇

日本の皇室は現存する世界最古の世襲制王室だと伝統主義者は考えている。8世紀の歴史書によれば、太陽神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)が鏡、玉、剣を孫神に授け、それが初代天皇である神武天皇に渡されたという。神武天皇は紀元前660年─585年のあいだ在位したとされるが、実在した人物かどうかは不明だ。

●象徴的かつ宗教的存在

皇室の歴史上、ほとんどの期間において、天皇は直接的な政治権力を持つことはなく、象徴的かつ宗教的な存在だった。1889年に公布された大日本国憲法により、天皇は「国の元首」であり「統治権を総攬(そうらん)する」存在とされた。

●戦後の変化

第2次世界大戦中、戦時指導者らは神道のイデオロギーを使い、「現人神」(あらひとがみ)である天皇のためだとして大衆を戦いに向かわせたが、戦後施行された日本国憲法では、政教分離原則を規定。国家神道は解体された。今日、天皇は毎年20ほどの神道儀式を、公務とは別の私的な活動として行っている。

●天皇陛下と皇后美智子さま

1933年生まれの今上天皇は、アジアの旧植民地国との関係改善に努め、平和を愛する国としてのイメージを打ち出す役目を担ってきた。皇后美智子さまとともに、2人は皇室を近代化し、一般人にとってより親しみやすい存在に変えた。

●昭和天皇、神の子孫から国の象徴に

今上天皇の父である昭和天皇は神の子孫として位置づけられていたが、1945年に日本が第2次世界大戦に敗北した後、自ら神格を否定した。戦後間もなく日本を占領・統治した連合国軍総司令部(GHQ)が草案にかかわった日本国憲法によって、天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と定められた。

●女性天皇は誕生するか

皇室典範では皇位継承資格を「皇統に属する男系の男子」に限定している。しかし、過去に女性天皇は存在した。自分の子どもに皇位を継ぐことができない中継ぎ的な役割を果たした。

皇太子さまには長女愛子さまがいる。皇太子さまの即位後、皇位継承順位1位は弟の秋篠宮さま(53)、2位は秋篠宮さまの長男悠仁さま(12)となる。3位は、今上天皇の弟である常陸宮さま(83)だ。

●天皇譲位の背景

これまで前立腺がんと心臓のバイパス手術を受けるなど大きな病を経験した80代の今上天皇は2016年、今後の務めを果たしていくことが難しくなると退位の意向をにじませる「お気持ち」を表明。1817年の光格天皇以来初めてとなる天皇の生前退位を可能とする特例法が翌年、国会で成立した。

(翻訳:宗えりか、編集:下郡美紀)

Linda Sieg

[東京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩

ワールド

米民主上院議員が25時間以上演説、過去最長 トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中