最新記事

性犯罪

親と引き離された移民の子供が職員による性的虐待を受けていた?

Detained Child Migrants Claim Sexual Abuse

2019年2月28日(木)16時13分
ニコール・グッドカインド

親子をむりやり引き離した結果さらなる悲劇につながってしまったのか Carlos Barria-REUTERS

<移民の子供を収容する施設で、職員が組織的な性的虐待を行っていた疑惑が浮上した>

米政府が移民収容施設で隔離している数千人の子供が、過去4年間に性的虐待を受けていた疑いがあることが、米保健福祉省(HHS)の文書で明らかになった。

「同伴者のいない子供に対して職員が行った組織的な性的虐待の実態が詳細に記されている」と、テッド・ドイチ米下院議員(民主党)が2月26日、ドナルド・トランプ米政権による不法移民の「親子引き離し政策」に関する公聴会で証言した。

ドイチは「身震いする」と糾弾。ツイッターにも「非道で恥ずべきだ」「回答を要求する」などと投稿した。

米ニュースサイト「アクオシス」がドイチ経由で入手した同文書には、移民収容施設に入れられた未成年者が訴えた、日常的な性的虐待の実態が克明に描かれている。体を触られたり、入浴をのぞかれたり、ポルノ画像を見せられたりした事例もあった。

2014年10月から2018年7月までの4年間で、米保健福祉省難民再定住室(ORR)と米司法省は性的虐待を受けたとする未成年者の訴えを5,859件も受けていた。うち200件近くは未成年者の身の回りの世話をする施設職員による虐待だった。もし全て事実なら、平均して1週間に1件のペースで職員による虐待があったたことになる。

報告を受けたHHSがすぐに捜査し、加害者の職員を解雇した事例が複数あった。

「同伴者のいない未成年者の収容施設を管理するうえで、われわれは子供の安全を最優先に考えている」と、HHSのケートリン・オークリー報道官はアクオシスに述べた。「HHSから補助金をもらって運営している移民収容施設は、保育サービスを行うためのライセンスを各州で取得している。運営に関してはHHSの児童家族局にあるORRが厳格な基準を定めているほか、施設の職員全員のバックグラウンドチェックを必須としている。虐待や性的嫌がらせ、ネグレクトなどの疑いがあれば深刻に受け止め、ORRが即座に調査、対応している」

親子引き離しは「誘拐」との批判も

トランプ政権は2018年4月に導入した不法移民への「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ)政策」の一環で、数千人の移民の子供を親から引き離して別々に収容した。子供を親と再会させるよう裁判所が命じたにもかかわらず、いまだに大勢の子供が家族に会えないまま収容されている。

「赤の他人が親元から子供を奪えば誘拐と同じだ」と、米議会下院の司法委員会トップを務める民主党のジェロルド・ナドラー議員は言った。「トランプ政権には数千人の親子を引き裂いた責任がある。責任を取るべきだ」

その公聴会で民主党のシーラ・ジャクソン・リー下院議員は、引き離された親子の居場所追跡が適切に行われなかったせいで今後も再会できない恐れがあるとして、懸念を示した。

(翻訳:河原里香)

※3月5日号(2月26日発売)は「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集。アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)とは、アマゾンが引き起こす市場の混乱と変革のこと。今も広がり続けるその脅威を撤退解剖する。ベゾス経営とは何か。次の「犠牲者」はどこか。この怪物企業の規制は現実的なのか。「サバイバー」企業はどんな戦略を取っているのか。最強企業を分析し、最強企業に学ぶ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中