最新記事

アマゾン

アマゾンのジャングルに打ち上げられたザトウクジラの不思議

26-Foot Humpback Whale Found Dead In Amazon Jungle, Experts Baffled

2019年2月26日(火)14時56分
バイシュナビ・バイディアナタン

マングローブの深い森で見つかったザトウクジラの子ども Daily Mail/YOUTUBE

<生息地から遠い海、それもジャングルになぜ? 首をかしげる研究者たち>

2月22日、ブラジル北部のアマゾン川河口にある巨大な中州でザトウクジラの死骸が見つかった。1歳程度とみられるクジラの死骸が見つかったのは、浜辺から15メートルも入ったジャングルの中。いったいどのようにここまできたのか、専門家は首をひねっている。

クジラの体長は8メートルほど。死骸にハゲワシが集まってきたのを見た生物学者グループが発見した。ブラジル健康・衛生・環境局のディルレーネ・シルヴァは次のように語った。「猛禽類が死骸を漁っていなかったら、クジラは見つからなかった。海から離れたやぶの中に隠れていた死骸の上を、ハゲワシがぐるぐる飛び回っていることに、生物学者たちが気づいた」

マラジョ島で野生生物の保護活動を行うNGO「ビチョ・ダグア研究所」の専門家は、クジラが自然の生息環境からはるか離れた場所で死骸で見つかったことに驚いていると述べた。また、クジラは岸に打ち上げられる前に死んでいた可能性もあるという。

同NGO代表のレナータ・エミンは、「クジラがどうやってここにたどり着いたのかは、まだわからない」と述べた。「岸の近くを泳いでいて、ここ数日の高潮に乗って流され、マングローブが生い茂るジャングルの奥に運ばれたのかもしれない」

「この死骸の発見場所に驚くとともに、ザトウクジラがブラジル北岸で2月に何をしていたのか困惑している。こんなことは滅多に起こらない」と、エミンはニュージーランド・ヘラルド紙に語った。

こんな北にはめったに来ない

「ザトウクジラは通常、ここまで北上しない。3年前に一度だけ、この近辺で見かけたが、大変珍しいことだ。このクジラはおそらく子どもで、母親と一緒に2つの大陸のあいだを回遊していて、迷子になったか、離れ離れになったのではないか」

生物学者たちは、このクジラがどのように死んでジャングルまで運ばれてきたのかを解明するため、死骸の劣化が進む前にサンプルを収集した。

「腐敗の程度によっては、すでに消えてしまった情報もあるかもしれない。できる限り情報を収集し、死骸に残った痕跡や傷を鑑定して、魚網にかかったのか、船に衝突したのかを調べたい」

死骸から収集したサンプルの検査には、10日ほどかかる見込みだ。

ザトウクジラは通常、8月から11月にかけて、ブラジル中部のバイーア州北東部沿岸で目撃される。クジラたちはその後、餌を求めて南極へと向かうという。

(翻訳:ガリレオ)

※3月5日号(2月26日発売)は「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集。アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)とは、アマゾンが引き起こす市場の混乱と変革のこと。今も広がり続けるその脅威を撤退解剖する。ベゾス経営とは何か。次の「犠牲者」はどこか。この怪物企業の規制は現実的なのか。「サバイバー」企業はどんな戦略を取っているのか。最強企業を分析し、最強企業に学ぶ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中