最新記事

宇宙開発

2019年、宇宙ビジネスを牽引するIoT衛星とは何か──日本も大学で研究開発

2019年2月7日(木)18時40分
秋山文野

IoTで一般的な無線変調方式LoRa(ローラ)を使い、世界で多く使われている方式に合わせた。日本以外の国でも地上から衛星への通信に成功しているといい、同型の衛星を多く製造し、コンステレーション(衛星網)化することが可能になっている。

jaxa20180221-1.jpg

jaxa20180221-2.jpg

東京大学によるストア&フォワード実証衛星「TRICOM-1」と「TRICOM-1R」。TRICOM-1は打ち上げ失敗のため失われたが、2号機TRICOM-1Rで通信実験に成功した。クレジット:JAXA/東京大学

2018年8月に運用を終了した「たすき」衛星に続き、開発に参加した東京電機大学が新たなIoTキューブサットの開発実証を計画している。東京電機大学のキャンパスがある埼玉県鳩山町にちなみ、「ハトサット」と名付けられる衛星だ。

人の手で携帯可能な小型軽量の送信機から登山者の生体情報などを送信し、安全確認などができるIoT衛星システムを実証する。「たすき」と同様に日本で利用できる920MHz帯の周波数を使う。この周波数帯は草木を通り抜けやすく、木立が存在する山間部などでも利用しやすいという。将来は、よりデータ量が大きいMEG、MRIといった脳の検査機器のデータをIoT衛星を使って収集、送信するシステムの開発につなげるという目標を持っている。

IoTシステムで接続される機器数は、2015年の60億台から2025年までに270億台まで拡大するという予測がある。地上で電波の利用できない場所にあるセンサーからのデータ収集は、広域の利用で活躍する衛星の出番だ。需要が拡大する中、日本でも海外同様にIoT衛星ベンチャーが宇宙ビジネスのひとつとして生まれる可能性は高そうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中