最新記事

日本経済

日銀、貿易輸出版ヒートマップ作成 下振れリスク可視化で警戒感の高まり鮮明に

2019年1月24日(木)17時45分

1月24日、日銀はこのほど、日本の輸出が先行き大幅に減少する可能性を可視化した輸出版のヒートマップを作成し、1月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の全文に掲載した。写真は横浜で2017年11月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

日銀はこのほど、日本の輸出が先行き大幅に減少する可能性を可視化した輸出版のヒートマップを作成し、1月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の全文に掲載した。それによると、現状は過去のITバブル崩壊やリーマンショックほどの強いシグナルは観察されないものの、海外経済を巡る不確実性が高まる中で、落ち込みを示唆する指標も増えている。

日銀作成のヒートマップは、金融活動の過熱と停滞を判断するために金融システムリポートで公表している「金融活動指標」が有名だが、今回はその輸出版といえる。

日本の実質輸出の落ち込みに対して予測可能性が高いとみられる18指標で構成されており、それぞれの指標の変動が一定範囲よりも下振れた場合を「青色」、範囲内にあるがトレンドとかい離している場合を「水色」、ほぼトレンドに沿っている場合を「緑色」で表記した。

18指標は地域間や企業・家計のバランスなども配慮し、約250種類の中から抽出。グローバル製造業PMIや世界自動車販売台数、日本製造業PMI、米国のISM製造業景況感指数、中国の金属加工機械生産台数などのほか、金融関連指標ではMSCI株価指数、VIX指数が含まれる。

過去の推移をみると、リーマンショックが発生した2008年には、大半の指標が先行きの大幅減少を示唆する「青色」となり、ITバブルが崩壊した2001年、欧州債務問題が深刻化した2012年も「青色」の割合が高まった。

足元では、米中貿易摩擦の激化などを背景に、世界経済の先行き不透明感が強まっているものの、2018年末時点では「青色」が世界自動車販売台数、中国金属加工機械生産台数、VIX指数の3指標となっており、日銀では「低い水準にとどまっている」と判断している。

もっとも、全指標が「緑色」だった2017年に対し、シグナル発生の手前となる「水色」を付けた指標も複数あり、警戒感は着実に高まりつつある。

日銀は同リポートで、海外経済について「下振れリスクは、このところ強まっているとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある」と警戒感を一段と強めている。

(伊藤純夫)

[東京 24日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

graph_20190124_182338.jpg

日本銀行「2019年1月 経済・物価情勢の展望(展望レポート)」より輸出環境のヒートマップ

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪、米から超音速ミサイル購入へ 国防支出へのコミッ

ビジネス

物価目標の実現は「目前に」、FRBの動向を注視=高

ビジネス

FRB監督・規制部門責任者が退職へ、早期退職制度で

ビジネス

午前の日経平均は小幅続落、売買交錯で方向感出ず 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中