長引く米国の政府閉鎖、景気への悪影響が懸念されはじめた
また、一部の閉鎖に止まるとはいっても、その期間が長引くのであれば、政府による一時的な支出の減少だけでなく、間接的な影響の広がりが軽視できなくなる。
例えば、個人消費への影響である。今は前年度予算の残りで続けられている低所得者への補助金の支給が滞れば、個人消費への打撃となる。閉鎖期間中の政府職員の給与は閉鎖解除後に補てんされる予定だが、政府機関の清掃等を担当する下請け業者の従業員については、閉鎖で失われた給与を取り戻す手立てがない。1月末から始まる予定の確定申告に伴う税還付が、順調に実施されるかどうかも不透明だ。
ビジネスへの影響も出始めた。証券取引委員会(SEC)が閉鎖対象であるために、企業の新規株式公開(IPO)の手続きが滞っている。食品医薬局(FDA)の予算が枯渇するなかで、新たな処方薬の承認も遅れそうな状況だ。政府職員の出張減等を懸念するデルタ航空のように、収益悪化の可能性を明らかにする企業も出てきた。
さらに、タイミングも問題である。過去の政府閉鎖が景気の拡大を阻害しなかったのは、そもそもの景気が強かったことに助けられた面がある。これに対して現在は、中国経済の減速や貿易摩擦の深刻化が懸念される等、政府閉鎖以外の不安材料が山積している。仮に政府閉鎖だけであれば耐えられたとしても、他の要因が重なった際の試練は大きくなる。
税還付を担当する職員も休み
トランプ政権は、予算が成立していない省の職員を無給で働くよう呼び戻す等、業務遅延の悪影響の顕在化を抑える手立てを講じている。しかし、税還付を担当する内国歳入庁(IRS)では、無給での出勤を拒否する職員が多いと伝えられる等、こうした対応には限界が露呈している。
注意する必要があるのは、消費者や企業への心理的な影響である。実際の悪影響が生じていない段階でも、今後の見通しに対する警戒感が高まれば、消費者や企業の活動は萎縮する。個人消費や企業の投資が冷え込むことで、政府閉鎖の悪影響が増幅されかねない。ミシガン大学が発表した1月の消費者信頼感指数(速報値)は前月から急低下しており、気になる兆候が確認できる。
心理的な影響という点では、今回の政府閉鎖が、こらから訪れるさらなる混乱の予兆と受け止められる可能性が気掛かりだ。これから夏にかけて、米国には対処しなければならない重い課題が待ち受けている。政府閉鎖を招いた大統領と議会の対立が再現された場合には、米国経済に深刻な影響が及びかねない。