海外投資、海外移住、国籍放棄......海外に目を向ける韓国の資金と人材
こうした動向の原因の一つは、最低賃金の引き上げと労働時間の週52時間上限制という文在寅政権の経済政策が中小企業の経営を圧迫しているためだ。韓国経済研究院のユ・ファンイク経営革新室長は、人材や海外経験の乏しい中小企業が海外に進出するリスクを考えても韓国にとどまるより良いとし、政府が賃金など労働分野で中小企業を縛る政策をやめなければ製造業が空洞化する懸念があると指摘する。
中小企業の海外投資は2012年の21億1696万ドルから2017年には74億2488万ドルへと5年間で3倍以上に増えており、2018年7月から9月期には四半期ベースで過去最高の30億3587万ドル(約3443億円)に達している。
日本に向かう移住者たち
海外移住を望む人も多い。プルデンシャル生命がソウルと5大都市に住む男女500人を対象に実施したアンケート調査で、回答者の60.4%が引退後に海外居住を望んでいると回答した(chosun.com)。
50代は49.5%で、40代63.7%、30代68.8%と年齢層が低くなるほど、海外居住に前向きだった。移住を希望する国は、豪州が16.8%で最も多く、カナダ14.4%、米国11.8%、ニュージーランド8.8%と英語圏が続いている。
直近10年間に韓国籍を放棄した人は20万人を超え、2018年には1月から10月の間に韓国籍を喪失・離脱した人が過去最高の3万284人に達した。セウォル号以後も多発するインフラの事故で「安全不感症」が慢性化していることへの不安と、一流大学に入らないと社会で生き残っていくのが難しい環境から逃れたいのだという。そして、兵役を強化する在外同胞法の改正も国籍離脱に拍車をかけた。
韓国籍を放棄した人が取得した国籍は米国が最も多く、日本が続いているが、2013年から17年の5年間、韓国外交部に移住申告した国は日本が最も多く、50.2%に達している。
就職難が続くなか、日本をはじめ海外に職を求める若者が増えているが、一旦、海外に出た韓国人は母国に戻らない傾向がある。海外に投資する資金の海外流出や産業の空洞化に加えて、人材の海外流出も加速している。