最新記事

韓国

フィリピンはゴミ捨て場か!と反韓の声 韓国業者が違法産廃を大量に「輸出」

2018年12月17日(月)18時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

海洋プラスチックごみの大半はアジアから

海洋保護団体「オーシャン・コンサバンシー」は、毎年世界の海洋には世界各国から約800万トンのプラスチックごみが流れ込んでおり、その半数近くがアジアからと指摘されている。

海洋汚染の犯人と指摘されたアジアだが、なかでも中国、インドネシア、タイ、ベトナムそしてフィリピンが流出大国だという。

ところがゴミのもとであるプラスチック製品の大量廃棄国であり、一方で大量生産国としてリサイクルのため海外からプラスチックごみを受け入れてきた中国が、2018年1月突然プラスチックごみを含む産業廃棄物の輸入を全面的に禁止した。

このため韓国の産廃業者が中国に代わる輸出国としてフィリピンに大量の産廃を「輸出」したとの見方が強く、今回発見された6500トンは氷山の一角で「実際にはさらに多くの産廃が韓国から来ている可能性がある」として税関当局は調査の徹底と監視の強化を進めている。

大量のプラスチックごみはクジラを殺す

海洋に投棄されたプラスチックなどのごみは、ただ海を汚すだけでなく海洋生物を殺す凶器でもある。11月18日にインドネシア・スラウェシ島の東南スラウェシ州ワカトビの国立公園内でクジラの死骸が発見され、解体調査したところ胃の中から大量のプラスチックごみが見つかり、世界中に報道された。

この時のクジラは体長9.5メートルのマッコウクジラで胃から回収されたプラスチックゴミは約5.9キロだった(「死んだクジラの胃から大量プラスチックごみ 深刻なごみ対策にインドネシア、バスのフリーライド導入」)。

クジラはごみを食べ物と勘違いして飲み込み、それらは消化されず胃の中に残るため、満腹を感じたクジラは食べ物を取らないまま栄養失調になったり、消化器官の炎症を起こすという。

2018年の5月にはタイ南部の運河で衰弱したゴンドウクジラが発見され、保護後に死亡した。死後調査のため解体したところ腹部からレジ袋80枚などプラスチックごみ8キロが発見された。

このように東南アジアでもプラスチックごみの海洋汚染、海洋生物への影響は深刻化しており、各国でプラスチック製品の使用自粛が進むなか、産業廃棄物を偽装して他国に押し付けようとする韓国の姿勢は厳しく指弾されるべきで、フィリピン国民の憤りを韓国側は真摯に受け止めることが求められている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、中国で1000万人雇用喪失を警告 米回

ビジネス

米3月モノの貿易赤字、9.6%増の1620億ドル=

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も伸び加速 米関税措置前で利

ビジネス

中国がグローバルサウスで主導的役割、新開発銀と協力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 6
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中