最新記事

人体

気管支の形状に固まったリアルな血の塊が吐き出される

2018年12月17日(月)15時00分
松岡由希子

吐き出された気管支の形状に固まった血の塊 Woodward et al./NEJM-twitter

<アメリカで36歳の男性患者が吐き出した、15センチほどの右気管支樹の形状に固まった血の塊の画像が大きな反響を呼んでいる>

右気管支樹の形状に固まった血の塊を吐き出した

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校付属病院で36歳の男性患者が吐き出したとされるリアルな血の塊の画像が、2018年12月3日、医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」の公式アカウントからツイッターに投稿され、様々な反響を呼んでいる。

幅およそ15センチの血の塊は、右気管支樹の形状に固まった凝塊だ。慢性心不全が急激に悪化し、集中治療室(ICU)に入院したこの男性患者は、低下した心臓のポンプ機能を助ける補助人工心臓(VAD)を装着する手術を受け、ヘパリンとよばれる抗凝固薬を継続的に投与されていた。この抗凝固療法は、血栓の生成を予防するために必要なものだが、何らかの原因で出血が起こると、血が止まりにくくなるというリスクがある。

1週間後、心不全の合併症で死亡

男性患者は、その翌週、少量の喀血が数日続いた後、激しく咳き込み、大きな血の塊を吐き出した。

主治医のジョーグ・ウィーゼンタール医師がこれを広げると、右気管支樹の形状がそのまま現れたという。青矢印で示されているのが上葉枝、白矢印が中葉枝、黒矢印が下葉枝だ。ウィーゼンタール医師は、米メディア「アトランティック」の取材に対して「非常に驚いた。これは、極めて珍しいことだ」とコメントしている。

その後、男性患者に気管挿管し、軟性気管支鏡で検査したところ、右下葉に少量の血液が見つかった。男性患者は2日で抜管され、その後、喀血することはなかったが、1週間後、心不全の合併症により死亡している。

ほかにも事例はあった

気管支の形状をした物体が体内からそのまま吐き出されることは極めて稀だが、いくつか事例もある。

1926年には、米ロチェスター大学付属病院でジフテリアに感染した34歳の女性が、気管、気管支および細気管支の形状をした膜の一部を吐き出したことが記録されているほか、2005年9月には、欧州心臓胸部外科学会誌において、英セント・トーマス病院のアマン・クナー医師が、気管支樹の形状をした血の塊を吐き出した25歳の妊婦の例を報告している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中