最新記事

サウジアラビア

サウジ、トランプに逆らう石油減産で対米関係悪化

Will Gas Prices Go Up? Saudi Arabia to Cut Production

2018年11月14日(水)17時40分
ジェーソン・レモン

記者殺害事件では、トランプは初めサウジのムハンマド皇太子(左)を庇っているように見えたが(写真は今年3月、ホワイトハウス) Jonathan Ernst-REUTERS

<対イラン制裁発動後の原油価格が反落するなか、サウジアラビアは石油産出量を削減する方針を発表。原油高を批判してきたトランプと衝突か>

ドナルド・トランプ米大統領の警告にもかかわらず、サウジアラビアのハリド・ファリハ石油相は11月12日、石油生産を減らす方針を発表した。

アメリカは11月5日からイラン産原油の禁輸制裁を再開したが、これまでイラン原油を大量に輸入していた国には一時的な適用除外を認めている。ファリハはこの点に触れ、「予想されたほど市場への原油供給は減っていない」と述べた。そして現在、石油の供給過剰で価格が下落しているため、市場を安定させるために生産量を抑制すると語った。

トランプは12日のツイートで、この発表を批判した。「願わくば、サウジアラビアやOPECには原油生産を削減してほしくない。供給量からすれば、石油価格はもっと下落するはずだ!」

トランプは以前から、OPECと原油価格に対するその支配力に不満を示してきた。今年7月にはOPECを「独占組織」と呼び、ツイッターでこう警告した。「ガソリンの価格が上昇しているのに、彼らはほとんど役に立っていない。それどころか、アメリカは多くのOPEC加盟国をほとんど無料で守っているのに、連中は原油価格を釣り上げている。われわれの関係は、互恵的でなければならない」

OPECは世界の主要産油国が加盟する組織で、原油生産に関する決定は、世界の原油価格を左右する。産出量が増えれば、一般的に消費者価格は下がり、産出量が減れば価格は上昇する。

トランプとOPECが真っ向勝負

金融ニュースサイトのマーケットウォッチによれば、原油価格はここ数週間で大幅に下落し、ニューヨーク商品先物市場のNY原油で1バレル当たり60ドルを割り込んだ。

プライス・フューチャーズ・グループの上級市場アナリスト、フィル・フリンは、トランプとOPECの軋轢が世界市場に緊張を引き起こしている、とコメントしている。

「株式市場の下落とドナルド・トランプのツイートの相乗効果で、原油価格は反落した」と、フリンは述べた。「石油はテクニカル的に弱いポジションにある。それに11月11日はベテランズ・デーの祝日で、通常より消費量が少なかった」

「現実を認めよう──OPECとトランプはやる気満々だ」彼は付け加えた。

アメリカ主導の対イラン制裁再開までの間、サウジアラビアとロシアは、世界の石油供給を安定させるために原油増産に同意した。市場はイラン原油に対する厳しい制裁を懸念し、原油価格は1バレル当たり85ドルに上昇した。

だが現在、原油価格は大幅に下落し、イランも依然として主要市場への輸出が可能な状態であることから、サウジとしては過剰生産を続ける必要はほとんどないと考えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中