最新記事

ライフスタイル

データで見る「ニッポンの独身者は誰と暮らしているのか」-「結婚のメリットがわからない」独身者の世帯(居場所)のカタチとは-

2018年11月9日(金)13時30分
天野馨南子(ニッセイ基礎研究所)

経済的にリーズナブルな上に、例えば長年親しんだ習慣から離れなくてもよいというメリットが付加される。

特に長年子どもとして暮らしてきた立場から「加齢していても子どもポジションとしての居場所をキープ」することさえも容易であろう。これは結婚のメリットでは得がたいメリットでもあるだろう。

親との同居メリットとして、例えば

料理や掃除や洗濯は母親/近所付き合いも母親/不動産コストゼロ/父親の車がタクシー代わり

となってくると、もはや子どもポジションにある人間の思考が「親を超える大金持ちとの結婚以外、メリットなし」となっても致し方ないだろう。

2|45歳以上:「老後1人で生活することへの不安」で結婚希望再燃

かつて、農村社会が主流であった時代には大規模家族経営のメリットとして、とにかく親族同居が最適であったかもしれない。

しかし、第2次・第3次産業従事者が大半を占めるようになった中で、このような親族密着型の家族のあり方の維持は、愛する息子・娘の経済的自立や責任感の醸成、新たな家庭形成への一歩という自立心を奪いかねないことは考えておきたいところである。

明治安田生活福祉研究所の2017年の「35~54歳の結婚意識に関する調査」では「一生独身でいることを決意・覚悟した理由」については、男性の4割、女性の3割が「結婚に向いていない」であった。

そして、45歳以上で「やっぱり結婚したいと思うようになった理由」については、男性の4割、女性の5割が「老後1人で生活することへの不安」と回答している。

本レポートの分析では、50代以降、おそらく親の病気や他界などによって「20代から続いていた独身男女とその親との同居が解消」されることによる、「中高年からの非自発的なひとり暮らし」が急増している。

その中で、45歳以降になってようやく「1人は不安だ、やっぱり結婚したい」と思い始めるという、現代の独身男女の姿が浮かび上がる。

独身男女の「結婚が向いていない」「メリットがわからない」という回答の背景の1つに、男性6割超、女性7割超の「身内だけとのリーズナブルで気楽な暮らし」があることは間違いないといえるのではないだろうか。

可愛い子には旅をさせよ。

そんな言葉が日本の未婚化を理解するキーワードの1つになりうるかもしれない。

【参考文献一覧】

国立社会保障人口問題研究所.「出生動向基本調査」
国立社会保障人口問題研究所.「出生動向基本調査(独身者調査)」第11回~第15回
厚生省人口問題研究所(1992)「独身青年層の結婚観と子供感」
厚生労働省.「人口動態調査」
国立社会保障・人口問題研究所. 「人口統計資料集」2017年版
総務省総計局. 「平成27年 国勢調査」
明治安田生活福祉研究所. 「2017年 35~54歳の結婚意識に関する調査 」
明治安田生活福祉研究所. 「2017年25~34歳の結婚と男女交際(男女交際・結婚に関する意識調査より)」
明治安田生活福祉研究所. 「2017年15~34歳の恋愛と男女交際(男女交際・結婚に関する意識調査より)」

天野 馨南子."2つの出生力推移データが示す日本の「次世代育成力」課題の誤解-少子化社会データ再考:スルーされ続けた次世代育成の3ステップ構造-" ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2016年12月26日号

天野 馨南子."<2015年最新国勢調査結果・都道府県別生涯未婚率データが示す「2つのリスク」-お年寄り大国世界ランキング1位・少子化社会データ再考-">2015年最新国勢調査結果・都道府県別生涯未婚率データが示す「2つのリスク」-お年寄り大国世界ランキング1位・少子化社会データ再考-" ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2017年5月1日号

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。

amano181109.jpg[執筆者]
天野 馨南子 (あまの かなこ)
ニッセイ基礎研究所
生活研究部研究員

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中