「日中が近づきすぎるとアメリカが...」中国政府高官独自取材
もっとも、戦略的観点から言うならば、中国もアメリカとの関係を収拾がつかない関係に持っていこうとは思っていない。
Q:では、どのようにして中米関係を収拾させようとしているのですか?
A:それは難しい質問だ。誰が大統領になろうと、中国が大国になれば、必ずアメリカと衝突する。これは歴史的必然であり、不可避のことだ。それにアメリカはここ数十年にわたって、おおむね10年に1回ほどの割合で経済的危機を迎える傾向にある。今年はリーマンショックからちょうど10年。ちょうど経済的な危機にさしかかり始めているということができる。そういう時期をどのようにして乗り越えるのか。アメリカの選択には「戦争」あるいは逆に「世界と深く融和していく」かのどちらかがあるはずだが、トランプは国際社会から孤立して、国際社会を相手に喧嘩を売っている。これは前者、「戦争」への道を選ぼうとしているということになる。その時の攻撃相手は、自分の次に強い国だ。
Q:それが中国だということですね。
A:そうだ!特に中国はいま「中国製造2025」という国家戦略で、アメリカなどの先進国に頼らなくてもいいような「コア技術に関する自力更生の道」を歩み始めた。トランプは、この「中国製造2025」が怖いんだよ。習近平が、この国家戦略を断固達成しようと決意を固めているのが怖いんだ。だから中国を攻撃してくる。
Q:今回の日中首脳会談に習近平が積極的になっているのは、そのことがあるからではないんですか?米中関係が悪いので、日本を歓迎したということではないんですか?
A:その点は否めない。短期的には、それは否定しない。しかし2点、忘れないでほしい。たとえ短期的に日中が近づいても、李克強がレセプションで言った言葉に代表される、中国の日本に対する考え方は、永久に変わらない。
そして2点目。ここが肝心なのだが、「日中が近づき過ぎると、実は米中関係に良くない影響をもたらす危険性を秘めている」のだ。中国は米中関係を最も重要視しているので、日本よりアメリカとの関係を優先させるだろう。
以上だ。
日中接近は、米中関係をコントロールするための、一つの道具に過ぎないことが、ここから読み取れる。日中接近は短期的なものであり、いつどのような変数を持ち得るか、用心をして考察していかなければならないことが分かった。(10月25日夜半)
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。