最新記事

中国

「日中が近づきすぎるとアメリカが...」中国政府高官独自取材

2018年10月26日(金)11時46分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

もっとも、戦略的観点から言うならば、中国もアメリカとの関係を収拾がつかない関係に持っていこうとは思っていない。

Q:では、どのようにして中米関係を収拾させようとしているのですか?

A:それは難しい質問だ。誰が大統領になろうと、中国が大国になれば、必ずアメリカと衝突する。これは歴史的必然であり、不可避のことだ。それにアメリカはここ数十年にわたって、おおむね10年に1回ほどの割合で経済的危機を迎える傾向にある。今年はリーマンショックからちょうど10年。ちょうど経済的な危機にさしかかり始めているということができる。そういう時期をどのようにして乗り越えるのか。アメリカの選択には「戦争」あるいは逆に「世界と深く融和していく」かのどちらかがあるはずだが、トランプは国際社会から孤立して、国際社会を相手に喧嘩を売っている。これは前者、「戦争」への道を選ぼうとしているということになる。その時の攻撃相手は、自分の次に強い国だ。

Q:それが中国だということですね。

A:そうだ!特に中国はいま「中国製造2025」という国家戦略で、アメリカなどの先進国に頼らなくてもいいような「コア技術に関する自力更生の道」を歩み始めた。トランプは、この「中国製造2025」が怖いんだよ。習近平が、この国家戦略を断固達成しようと決意を固めているのが怖いんだ。だから中国を攻撃してくる。

Q:今回の日中首脳会談に習近平が積極的になっているのは、そのことがあるからではないんですか?米中関係が悪いので、日本を歓迎したということではないんですか?

A:その点は否めない。短期的には、それは否定しない。しかし2点、忘れないでほしい。たとえ短期的に日中が近づいても、李克強がレセプションで言った言葉に代表される、中国の日本に対する考え方は、永久に変わらない。

そして2点目。ここが肝心なのだが、「日中が近づき過ぎると、実は米中関係に良くない影響をもたらす危険性を秘めている」のだ。中国は米中関係を最も重要視しているので、日本よりアメリカとの関係を優先させるだろう。

以上だ。

日中接近は、米中関係をコントロールするための、一つの道具に過ぎないことが、ここから読み取れる。日中接近は短期的なものであり、いつどのような変数を持ち得るか、用心をして考察していかなければならないことが分かった。(10月25日夜半)


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾包囲の大規模演習 実弾射撃や港湾封鎖訓

ワールド

和平枠組みで15年間の米安全保障を想定、ゼレンスキ

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 10
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中