最新記事

仮想通貨

相場低迷でも仮想通貨市場に活気──主役は「仮想通貨ヘッジファンド」

Cryptocurrency Funds Undeterred by Price Slump

2018年10月11日(木)18時00分
ロバート・ダイクス(米キャスピアン投資顧問共同創業者・CEO)

機関投資家が手を出しにくい仮想通貨取引の難点も解消しつつある Carlos Barria-REUTERS

<金融市場の主役、機関投資家の参入を阻む規制も徐々になくなり市場の整備も進んで、巨額マネー流入の日も見えてきた?>

今年6月、ポリチェーン・キャピタルが仮想通貨ヘッジファンドとしては初めて運用資産10億ドルを突破し、メディアの話題を呼んだ。同ファンドの出資者には、アンドリーセン・ホロウィッツ、ユニオン・スクエア・ベンチャーズ、ファウンダーズ・ファンド、セコイア・キャピタルなど、錚々たるベンチャー・キャピタルが名を連ねる。

サンフランシスコに本社を置くポリチェーンは、仮想通貨市場への参入を狙う多くの伝統的金融機関の1つに過ぎない。仮想通貨価格の低迷をものともせず、仮想通貨で運用する専門ファンドが次々に誕生。新規の設立件数は年末までに昨年の記録を塗り替える勢いだ。

仮想通貨の代表格ビットコインは昨年、最高値の2万ドル前後から7000ドル足らずまで暴落した。だが、そのおかげでヘッジファンドは仮想通貨にますます関心をもったようだ。そもそも強気市場でも弱気市場でも稼ぎまくるのがヘッジファンドの身上。相場の変動は怖くない。昨年には史上最高の130社の仮想通貨ファンドが設立されたが、今年の設立は既に60社を超え、このペースで行けば記録更新はほぼ確実だ。

大手機関投資家の資金も流入

大手メディアや仮想通貨の素人は、相場の下落ばかりに注目し、いつ反転するか、はたまた反転はあり得るかと気を揉むが、彼らが気づかない間に仮想通貨の世界は様変わりしつつあり、先行きを楽観視できる材料に事欠かない。

まず、規制の暗雲が徐々に晴れて、投資家にとって見晴らしのよい環境になりつつあること。仮想通貨を禁止した国やどう扱うべきか決めかねている国も一部にはあるが、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカの多く国々はブロックチェーン技術の将来性を理解した。仮想通貨を金融商品として扱うことに難色を示してきたアメリカも、制度や環境の整備に取り組みだした。

これまで機関投資家の参入を阻んできたさまざまな障害も解決されつつある。

世界最大の仮想通貨取引所であるコインベースは今年、「カストディ業務」を開始した。これは投資家の代理人として有価証券を保管し、取引の決済、配当金や元利金の受け取り、議決権の行使などを行うサービスだ。預かり資産は既に200億ドル超に達し、年末までに大手機関投資家100社を顧客リストに加える計画だ。ほかにも数十社の仮想通貨ファンドが小口顧客や機関投資家向けのカストディ業務参入を検討しており、大量の資金流入が見込めるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中