最新記事

居住可能性

「ヒトが生活できる重力の上限は4g 」との研究結果

2018年10月3日(水)19時00分
松岡由希子

「ヒトが生活できる重力の上限は4g 」Sergey Khakimullin-iStock

<惑星の重力がヒトの運動能力にもたらす作用についての研究で、「ヒトが生活できる重力の上限は4g」ということが明らかになった>

人類が居住可能な環境の中で、表面重力も重要な指標

長年、研究者たちは、地球以外で人類が居住可能な惑星を探索し続けてきた。惑星の居住可能性の評価においては、温度や日射量、気圧、大気組成のみならず、ヒトが起き上がって直立したり、合理的な速さで歩行できる環境かどうかを判断するうえで、表面重力も重要な指標にあげられる。

では、ヒトが長期間にわたって生活できる表面重力の限界は、いったいどれくらいなのであろうか。クロアチアのザグレブ大学の研究プロジェクトでは、2018年8月、惑星の重力がヒトの運動能力にもたらす作用についての研究論文をオンラインプラットフォーム「アーカイヴ」で先行公開した。この論文では「重力が4gを超えると、ヒトは通常の歩行ができなくなる」と結論づけている。

トレーニングによって3gから4g程度の重力に耐えうる

研究プロジェクトでは、まず、体重50キログラムのヒトの骨格が耐えられる重力の上限値を分析。静的圧縮応力のみを考慮した場合、その上限は地球の重力の90倍を超えるが、ヒトが動く際の動的応力も考慮すると、地球の重力1gのおよそ10倍がその上限であった。

一方、座ったり、横になったりしている状態から身体を起き上がらせる筋力がはたらく上限は5gで、重力がもたらす応力は骨格よりも筋肉のほうが大きいこともわかっている。

また、研究プロジェクトは、ヒトの足を倒立振子とし、歩行運動でのエネルギー消費を考慮した独自モデルを考案。このモデルを使って、歩行運動における重力の上限を分析したところ、649キログラムを背負って歩行する力持ちの男性で、その上限が約4.6gであることが明らかとなった。

言うまでもなく、私たち人間の骨格や筋肉は地球の重力に適したものとなっているため、重力の高い環境下ではうまく機能しないおそれがあるが、研究プロジェクトの考察によれば、フィジカルトレーニングによって3gから4g程度の重力に耐えうる強度を備えることは可能だという。

重力が5g以下と推定される太陽系外惑星は469個

2018年1月時点で確認されている太陽系外惑星は3605個。そのうち594個の惑星において、重力の算出に必要な数値である半径や質量が明らかになっており、重力が5g以下と推定されるのは469個にのぼる。居住可能性の観点からも、これらの惑星は有力な候補となりうるだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

豪首相、12日から訪中 中国はFTA見直しに言及

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中