最新記事

スポーツ

中国、トレイルラン人気が急上昇 欧米メーカーから大会開催地まで熱視線

2018年9月13日(木)16時49分

世界的メーカーも熱視線

15年に30件もなかったトレイルランニングの大会数は、今年は上半期だけで約250件に急増。中国市場で足場を固めたいスポーツブランドの関心も集めている。

世界最大のトレイルラン用品メーカー「サロモン」を傘下に持つアメアスポーツは、中国における今年上半期の売上高が23%増加した。2017年は、年間で13%増だった。

「我々の現在の目標は、中国のランナー全員にトレイルランをやってもらうこと」と、同社のアントニー・マルゲ氏は話す。中国事業を担当する同氏は、同国のトレイルラン人口が現在の15万人から今後5年で2倍から3倍に増えると予測する。

1足1898元の同社の高級ライン「S/Lab」シューズは、中国における売上高の17%を占める。だが、全世界の売上高に占める割合は3%でしかないと、マルゲ氏は説明する。

同社は中国のトップ選手20人のほか、年間30件のトレイルラン大会を後援している。「楽しくてクールで、他とは異なるこのスポーツへの情熱は高まる一方だ。我々の想像をはるかに超えるペースで中国市場は拡大している」と、アメアスポーツでアジア太平洋地域を統括するステファン・シュワルツ氏は言う。

中国の国家体育総局は、20年までに年間1000万人が国内大会に参加し、市場規模は1200億元以上に拡大すると予測する。

国外の大会でも中国人ランナーの存在感は高まっている。アルプスの最高峰モンブラン周辺を駆け抜け、トレイルランニング界のツール・ド・フランスと呼ばれる「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」の今年の参加者は、中国人が5番目に多く、彼らのために特別な歓迎会が開かれた。

米国のランニングシューズメーカー、アルトラ・ランニングで中国販売を担当するZhao Fan氏は、北京の五輪公園に隣接する店舗の売り上げが今年は倍増すると見込んでいる。

トレイルランニングが中国に浸透するにつれ、国際的なブランドも地場の新興企業の挑戦を受けることになるかもしれない。Zhao氏はこう話し、市場にとっては健全なことだと付け加えた。

走るために生きる

多くのトレイルランナーは、競技中心の生活や消費スタイルを送っている。北京科技大学でビジネスマネジメントを教えるHe Runyu教授は、飲酒と肉食を止めるのとほぼ同時に、長距離走に真剣に取り組み始めた。今は単に楽しむのを目的に、年平均10件程度のレースに参加している。

「わくわくするのが楽しみで仕方ない」と、エネルギッシュなHe教授。「景色が美しく、難しいコースがいい。走るたびに何か発見がある」と語る。

同教授は、走るために年間数万元を費やしているという。足首の怪我で途中棄権することになった龍羊峡のレースは、3000元の旅費がかかった。

「みんなランニングはとても安上がりだと思っている。私も始める前はそう考えていたが、実際には非常にお金がかかるものだと分かった」と同教授は話す。最もかさむのは旅費だという。

より多くの時間をトレイルランに割きたかったDou Jianyunさん(45)は、北京のスポーツウェアの新興企業「エンジン・バード」の販売職に転職した。

Douさんは、龍羊峡の100キロ走を完走した女性3人のうちの1人だ。彼女は衛星利用測位システム(GPS)を3つと、岩がちなコースで怪我をしないよう、走るときに体を支えるポールを新調して青海に乗り込んだ。

「走れなくても生きていける、でもハッピーではなくなるとも思う」と、Douさんは言う。

(翻訳:山口香子、編集:久保信博)

Christian Shepherd and Stella Qiu

[龍羊峡(中国) 31日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中