中国、無秩序開発のダム撤去で環境保護へ 一方で大規模水力発電は規制せず
規模の重み
中国審計署(会計検査院に相当)は6月、長江流域の11地域にある小規模水力発電所2万4100件を特定し、その「歴史的な貢献」を評価する一方で、現在は環境コストが高すぎる状態だと指摘した。
その1カ月後、中国政府はこの地域での新規ダム建設を禁止し、違法なプロジェクトはそれを「正す」と表明。だが、何カ所のダムを閉鎖するかは、まだ明らかになっていない。
「統一基準がなく、いまだに、小規模発電所のどれを破壊し、どれを継続させるのか明確ではない」と、四川省の環境グループ「横断山脈研究会」の楊勇会長は言う。
政府は、小規模ダムによって多くの希少な魚の生息地や繁殖パターンが破壊されたと指摘するが、環境団体などは、町やエコシステムを丸ごと水没させた巨大ダムのほうが与えた被害は大きく、地震や地すべり、さらには気候変動リスクまで増大させたと主張する。
長さ48キロ程度の周公河では、自然保護区に加え、国土面積の4分の1を開発から守るために新たに設定された「生態系保護レッドライン」に抵触する位置にある小規模ダムを、当局が撤去している。
だがこの川には、中国国電集団や中国華電集団、国家電網など、中国有数の大企業が運営する大規模水力発電所10基が残されており、環境保護省は今年、この川の「過開発」について批判している。
こうした企業やその子会社は、いずれもコメントを避けた。
中央政府系の電力会社は、ずさんに計画された小規模ダムが自社の利益を損なっているとして、規制当局による取り締まりを求めていた。
前出の楊氏は、より大規模なダムによる送電網へのアクセスを容易にするために、小規模ダムが閉鎖されたのではないかと疑っている。
「こうした小規模な水力発電所は従来、送電網の合意があり、それらが合法であれば、接続できた」と楊氏は言う。「大規模な発電所が多すぎて、送電網に接続できないという事態は、公正ではない」
農民のジャンさんにとってみれば、大規模ダムはすでに、住民が何十年も頼りにしてきた周公河から生き物を搾り取ってしまった。「何万人もの人がここで生計を立ててきたが、まもなくそれも無理になるだろう」と、彼は言った。
(翻訳:山口香子、翻訳:下郡美紀)
[楽山(中国四川省) 31日 ロイター]