最新記事

地方創生

徳島、「阿波おどり」で内紛する間にさらに地盤沈下? 衰退する地方復活の可能性はあるか

2018年9月4日(火)18時33分
木下 斉(まちビジネス事業家)*東洋経済オンラインより転載

このような中で、年に一度の大イベントである阿波おどりや、再開発事業といったもので互いに利権を奪い合い地元でもめればもめるほど、それは地元が衰退し「その分だけ他の地域に吸い上げられる」と認識したほうがよさそうです。写真は2009年に撮影したものですが、今の徳島市の中心部は残念ながら、あまり変わっていません。

tokushima_photo.jpg

シャッター通りとなった徳島市中心部のアーケード街(筆者撮影)

実は、徳島市と対極にある都市も数多くあります。代表的なのが、筆者が前から注目している福岡市です。

地元のおじさんたちのもめごとが地域を衰退させる

日本の他の地域の商店街が「百貨店よ、出て行け!」などと大型店を排斥しようとし、地域内対立を深めていた時代に、福岡市では天神地区にある百貨店や商店街などが互いに連合して「都心界」を組織しました。そして、合同で、隣接する都市の商業中心地に「天神に来てください」といった「エリア営業」をかけて、しだいに優位性を築いていきました。

また、祭りでも大いに参考になります。もともと「博多祇園山笠」は、「博多部」で長らく続いてきていた伝統行事でしたが、「福岡部」にあたる天神から参画することを受け入れ、「飾り山笠」を建てるなどしています。

こうしたこともあり、もともとは新興商業エリアにすぎなかった天神は、今や九州一の商業中心市へと発展。1889(明治22)年時点では徳島市よりも人口が少なく全国15位だった福岡市は、現在全国5位の大都市へと成長しています。

徳島市の実情をみれば、市の経済力も財政力も、伝統行事とのかかわり方も含め、内輪でもめている猶予はもうありません。

一刻も早く外を見て、新たな地域経済の立て直しにとりかからなくてはいけません。簡単に言えば、次の100年に徳島は「何で飯を食っていくのか」「何に力を注ぐのか」を決めることです。それらは、官民の関係なく、地元のさまざまな組織のトップの重要な役目です。

ひとことで言えば、「地元のおじさんたちのもめごとが未来を衰退に至らしめる」のは、何も徳島市に限った話ではないのです。

「誰と戦い、誰と組むべきなのか」。より合理的な判断と行動が熱望されます。

book01.jpgbook02.jpg

<参考文献> 鍛冶博之「近世徳島における阿波藍の普及と影響」


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg




20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 6
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中