最新記事

金融

ビッグデータなど分析した「AI活用投資」はリターンが大きい?

2018年7月13日(金)17時40分

6月11日、世界最大の資産運用会社ブラックロックで科学的アクティブ株式運用部門(SAE)を率いるジェフ・シェン共同責任者はロイターとのインタビューで、ビッグデータや人工知能を活用した投資戦略で運用する資産の9割が、1年、3年、5年、10年の各タームでベンチマークを上回るリターンを上げていると明らかにした。写真は同社のロゴ。都内のブラックロック・ジャパンで2016年10月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai/File Photo)

世界最大の資産運用会社ブラックロックで科学的アクティブ株式運用部門(SAE)を率いるジェフ・シェン共同責任者は、ビッグデータや人工知能を活用した投資戦略で運用する資産の9割が、1年、3年、5年、10年の各タームでベンチマークを上回るリターンを上げていると明らかにした。11日実施したロイターとのインタビューで語った。

ブラックロックの3月末時点の運用資産は6.3兆ドル(約710兆円)。このうちSAEでは1100億ドルを運用する。

主なやり取りは以下の通り。

──ビッグデータやAIをどう運用に活用するのか。

「例えば、衛星画像からビル建設などに使われる金属物の量を継続的に計測し、不動産開発の進捗や経済活動の先行きを知る材料としている。またGPSデータでトラックなど商用車の台数や走行速度を把握し、産業活動の実態を知る手掛かりとしている」

「こうしたビッグデータの活用にはミクロとマクロの2通りある。同じセクターの企業でどちらの活動が多いかを見れば個別銘柄の選択に使えるし、また総計をとれば国全体の経済活動を把握する材料となる」

「さらに、我々はグーグルトレンドなどのネット検索データや、個人投資家のブログ、ツイッターなどのSNSも活用する。もちろん特定個人の情報を見ているわけではなく、総合的な彼らの投資マインドを知るためだ。市場に占める個人投資家の比率が高い中国株の運用で始めたが、その後、韓国、米国、英国、日本株でも活用している」

「冷蔵庫を買うケースでは、少し前はPOSデータやクレジットカードの決済情報が、経済指標発表を先回りする最新の手掛かりを提供した。現在はさらに踏み込み、冷蔵庫を買おうという消費者が商品選択のためにネット検索した超『川上』のデータ、つまり実際の購買行動の前に消費者の意図を『見える化』しようというところまできた」

「サンフランシスコを本部とするSAEでは、シリコンバレーが目と鼻の先という地の利を生かし、ビッグデータやAIを活用した運用を10年ほど前から行っている。現在は前述のようなシグナル約300を投資プロセスに活用している」

──ここまでの運用成績と、投資判断が奏功・失敗した事例は。

「過去1年、3年、5年、10年といずれの期間でみても、SAEが運用する資産の90%はベンチマークをアウトパフォームした」

「昨年前半、いわゆるトランプ・ラリーが一服して市場が米国に弱気に傾いていた時に、我々は消費に関する各種シグナルに基づき、米国に強気のポジショニングをしたが、その見方が正しかったことがその後証明された」

「また我々はSNSのデータ追跡によりポピュリズムの機運の高まりを認識し、実はBrexit(英国のEU離脱)については事前に正しく予見することができた」

「ただし、予想外の大きなレジームシフトが起きた場合、そのターニングポイントでは一時的にアンダーパフォームすることがある。いくつかのシグナルが転換を示唆しても、ポートフォリオを変更するのは総合判断の結果だからだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中