最新記事

日本社会

最高気温35度超でも「教室にエアコン不要」と言う大人へ 「夏休みでセーフ」は全くない

2018年7月25日(水)06時00分
親野 智可等(教育評論家)※東洋経済オンラインより転載

「今の子どもは軟弱だから、エアコン不要」と言うのは論理矛盾

7月17日に、愛知県豊田市で小学1年生の児童が熱中症で亡くなりました。各社報道によると、公園で30分ほど昆虫採集をした後、児童たちは教室に戻って教室で休憩していました。ところが、休憩中に意識を失い、救急車で搬送されましたが亡くなりました。かけがえのない子どもを失ったご家族の心情は察するにあまりあるところです。

この教室にエアコンはなく、扇風機が4台設置されていただけとのことです。暑いさなかに公園に出掛けた判断も問題になっていますが、教室にエアコンがあったら助かった可能性があるということも指摘されています。この事故を受け、豊田市では、小学校の教室のエアコン設置工事を前倒しで進める方針を決めました。

根強くある「エアコン不要」の根性論

学校にエアコンを設置すべきか否かという議論は十年前からありました。そして、数年前までは、「子どものうちからエアコンの中で過ごしてばかりいては、体が弱くなる。せめて学校では......」「教室を快適にしてしまうと、休み時間にも外に出て遊ばなくなる」「つねに快適な環境の中にいては忍耐心が育たない」などという意見もありました。

ですが、今年の酷暑を経験してみれば、もはやそういう議論をしている段階でないことは明らかです。豊田市の事故は校外学習の後ということでしたが、このままでは、ずっと教室にいて熱中症になる児童が続出する可能性があります。

休み時間に外遊びをした子どもたちが汗だくで教室に戻ってくると、体感温度はさらに上がります。そうでなくても、1つの教室に40人近い子どもがいるのですから、子どもたちの発する熱の量だけでもハンパないものがあります。

私も講演先の学校で授業中の教室を参観させてもらうことがありますが、エアコンがない場合、7月や9月の教室内は勉強に取り組めるような環境ではありません。また、勉強面だけでなく、不快な環境にいればストレスもかかりますし、いら立ちにより子ども同士のトラブルやいじめが増えることも考えられます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中