モンテネグロを蝕む中国投資 「一帯一路」結ぶ高速道は債務超過への1本道?
懐疑派
モンテネグロが中国輸出入銀行から受けた8億900万ユーロの融資は、高速道路の第1区間にかかる建設コストの85%をカバーする。
このドル建て融資は利率2%で返済期間20年、そして6年の返済猶予期間が設けられている。魅力的な条件だと言えるが、人口62万人のモンテネグロの財政に長期的に重くのしかかることになる。
法的な争いが起きた場合には契約上、中国の仲裁裁判所が裁判権を持つ。また、CRBCが同国に持ち込む建材や重機などについて、関税と付加価値税の免除を約束されている。建設作業の70%は、中国の労働者に任される。
第1区間の建設現場では、3605人の労働者が忙しく作業を進めている。その3分の2程度が世界最大級の建築会社CRBCの従業員だ。
中国人作業員は、4カ所ある青い屋根の平屋建て宿舎で寝泊りしている。一帯には、中国語と英語で、細部をおろそかにせず、責任を持って作業に取り組むよう呼びかける看板が立てられている。
「CRBCは、ほかの区間の建設も行うことになると考えている」。6月の暑い日の午後、CRBCのKang Shifei副プロジェクト長はロイターにそう語った。頭上には、モラカ渓谷を横断する長さ1キロの橋を支えることになる巨大な柱がそびえている。
モンテネグロ政府は、融資に為替ヘッジを行っておらず、当初計画にあった重要な有料道路も見送ったために、コストは拡大し続けている。現在10億ユーロ近くまで増加しているが、これは同国GDPの4分の1近くに相当する。
ワシントンに拠点を置くシンクタンク世界開発センターは3月、中国の一帯一路に絡む負債リスクを点検した報告書を公表。この中で、モンテネグロを、ジブチやモルジブ、ラオス、モンゴル、タジキスタン、キルギスタン、パキスタンと並び、もっともリスクが高い8カ国の1つに位置づけている。
高速道路計画の残る4分の3は、より平坦な地域を通るもので、IMFは完成までにさらに12億ドル(約1350億円)の建設費が必要になると見積もっている。
モンテネグロのマルコビッチ首相は、どれほど費用がかかっても完成させると述べ、水力発電や観光の分野でも中国と協力を深めると約束している。批判するのは「信じようとしない人たち」だと一蹴した。
だが野党の政治家は、国の財政や中国の役割を懸念している。
野党URAのアバゾビッチ党首は、中国のような経済大国が、EUや米国、ロシアと肩を並べて、この地域での役割を求めるのは普通のことだと指摘する。
だがプロジェクトの巨大さゆえに、中国政府がモンテネグロに対し、さらに大きな影響力を持つ結果になるのではないかと懸念していると同党首は述べた。「中国は、極めて快適な立場を得ることになる」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[ポドゴリツァ 16日 ロイター]
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