最新記事

ハワイ

キラウェア火山の観光船に降り注いだ溶岩は海底からきた

Hydrovolcanic Explosions at Hawaii's Kilauea Volcano

2018年7月24日(火)17時20分
ニナ・ゴッドルイスキー

キラウェア火山の活動を海から見る観光船。事故に遭ったのとは別の船(6月4日) Terray Sylvester-REUTERS

<空から飛んできて遊覧船の屋根を突き破り、23人に重軽傷を負わせた溶岩は、海底の爆発から飛んできたものだという>

ハワイ島で7月16日、キラウェア火山の火山活動を観光していた船の近くで爆発が起き、乗員乗客のうち23人が重軽傷を負った。この爆発は、海中で起きたマグマ水蒸気爆発が原因だった可能性がある。爆発によって固形や半固形の溶岩が吹き飛び、観光船の屋根を突き破ったのだ。

事故に遭った観光船は7月16日早朝、5月初旬から噴火を続けているキラウェア火山の溶岩が海に流れ込むところを見学するために出発。ところが、高温の溶岩の塊が落ちてきて屋根に穴が開き、そこから溶岩や灰が降り注いできたため、ツアーは途中で取りやめになった。23人が負傷。1人が脚の骨を折る重傷で、ほかの乗客も火傷や切り傷を負った。

マグマ水蒸気爆発は、高温のマグマと水が反応して起こる。今回で言えば、キラウェア火山のマグマと海水だ。アメリカ地質調査所(USGS)はブログの中で、「爆発の詳しい原因はわかっていないが、溶岩流で海水が熱されたために起きたことはほぼ間違いない」と述べている。

webs180724-kila02.jpg
ハワイのキラウェア火山から海に流れ込む溶岩(7月18日) USGS

USGSによれば、こうした種類の爆発は1960年代に複数観測されている。漁師が、自分の乗っている船の前方で、溶岩が海面を突き破り、黒い岩が柱のように噴出しているのを見たという。噴出源は、海底の火口だった。

通常の火山爆発とは異なり、水に反応した爆発についてはあまりよくわかっていない。そのためマグマ水蒸気爆発が起きる正確な原因や仕組みについては議論がある。しかし、キラウェア火山の爆発は世界中からかつてないほど詳しく観測されているので、理解が深まり、新事実が判明するかもしれない。

マグマ水蒸気爆発の可能性がある地域のツアーは禁止され、以前ほど近づくことはできなくなった。USGSによると、7月16日と同様の爆発は、今後も起きる可能性がある。

「(7月16日の)爆発は、現在溶岩が海に直接流れ込んでいるところの海底の下に、溶岩の通り道があることを示唆している」とUSGSは述べている。

溶岩が海に流れ込む海岸だけでなく、沖にも小さな島が形成されているのも、溶岩の一部が海岸以外の場所からも流れ込んでいる可能性を示している。

キラウェア火山の活動を海から見る観光船。事故に遭ったのとは別の船(6月4日) Terray Sylvester/TWITTER



溶岩が降り注いで負傷者を出した観光船から撮影した爆発のもよう(7月16日) The Guardian/YOUTUBE


(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中