解放後も少年兵を苦しめ続ける心の傷と偏見
武装解除後の元少年兵をどう社会復帰させるかも大きな課題だ Finbarr O'reilly-REUTERS
<民兵組織によって内戦に駆り出された子供たち――武装解除後も腐敗や偏見が彼らへの支援を阻む>
5年前、11歳のハッサン(仮名)は中央アフリカ共和国中部の町カガ・バンドロの自宅付近で父親を民兵に殺された。悲しみに暮れ怒りに燃える少数派イスラム系住民の少年は、公正な法の裁きなど信じることができなかった。彼が信じたものはただ一つ――カラシニコフ(AK47自動小銃)だ。
ハッサンはイスラム教徒主導の反政府勢力セレカに加わった。セレカは13年に国の大部分を制圧、これにキリスト教系民兵組織「反バラカ」が報復し、中央アフリカは内戦状態に陥った。
ハッサンの初仕事はテロ実行部隊の指揮官の護衛だった。3カ月後には補佐官に昇進、子供10人を含む50人の部下を率いることになった。「最初は怖かった」と、ハッサンは言う。「でもじきに怖いと思わなくなった。銃を持つことに慣れた」
少年兵の調達役も任され、ささやかな見返りを受け取ることもあった。「仕事は好きだった。特別な休暇にはたばことカネをもらった」
だが内戦激化に伴い、物資は不足し、敵も味方も死者数が増加。夜はたいてい林の中で眠った。護衛の際は自分の命令に逆らった民間人を撃った。「血をたくさん見た」と、ハッサンは言う。「町を襲った後は満足だった。でもすぐに敵が戻ってくるかもしれないと気付いて怖くなった」
流血は今も続く。内戦は16年前半に一時小康状態になったが、後半から再び激化。イスラム系の反政府勢力は分裂して、鉱物資源と貿易ルートの争奪戦を繰り広げている。
国連主導のタスクフォースが元少年兵の社会復帰に苦戦する一方、民兵組織は少年兵を増やして戦力強化を図っている。今年3月、ウルスラ・ミュラー国連人道問題担当事務次長は「16~17年、武装集団による子供の募集・使用は50%増加した」と指摘。内戦も激化する一方だ。
武装解除も腐敗の温床に
ユニセフ(国連児童基金)によれば、数千人の子供が戦闘、調理、伝令、物資の運搬などに使われているという。「子供たちは内戦再燃の最大の犠牲者だ」と、ユニセフ西部・中部アフリカ地域事務所のマリー・ピエール・ポワリエ代表は言う。
04年以降、欧米諸国と国際機関は反乱を鎮圧し、民兵組織に戦闘員の動員解除と社会復帰への協力を促すべく、複数の武装解除プログラムに出資。武装解除に応じた戦闘員(子供も含む)に教育支援や職業訓練、雇用などを約束している。だが国連の統計によれば、14年以降に民兵組織から解放された1万2500人近い子供のうち、3分の1以上(約4500人)が今も援助を待っている。
武装解除プログラムは国連による平和構築の取り組みのカギだが、問題もある。交渉中に民兵組織の指揮官が国際NPOから支給品を奪い取ろうとしたり、戦闘員ではない子供や親戚を戦闘員と偽って見返りを得ようとするケースもあるという。