最新記事

米移民危機

不法移民の親子引き離す移民当局と商売していたマイクロソフトに非難の嵐

2018年6月20日(水)18時45分
ジェイソン・マードック

テキサス州リオグランデの収容所。親から引き離されアルミ毛布を渡された不法移民の子供たち CBP/REUTERS

<アメリカで大問題になっている不法移民の親子引き離し政策に関与していたと批判され、マイクロソフトが必死の防戦を迫られている。自慢の政府機関向けクラウドサービスの思わぬリスクが表面化した>

2018年1月の時点で、マイクロソフトは米移民・関税執行局(ICE)との業務支援契約を「誇らしい」と表現し、自社の顔認識および身元特定技術を大々的にアピールしていた。しかし今週に入り、同局が移民の子どもを家族から引き離し、金属製の檻に収容していることが判明すると、それどころではなくなった。

ICEとの契約を喧伝する過去のブログの存在が浮上した6月11日以降、全米にマイクロソフト批判が広がった。投稿は1月のもので、マイクロソフトのゼネラル・マネージャーだったトム・キーンが、政府機関向けクラウドサービス「アジュール・ガバメント」を宣伝したもの。「国家の安全保障と治安維持に画期的な進化をもたらす新技術」だと、キーンは書いていた。

しかし今、不法移民の子どもを親から引き離して隔離するICEの措置が明らかになり、残酷だ、非人間的だと批判を浴びるようになると、何とかICEとのつながりを打ち消そうと躍起だ。同社は当初、キーンのブログのうちICEとの提携に「誇りを感じる」と記された部分だけを削除するという対応を取った。しかしその後、この対応自体が批判され、記述を復活させた。

泣き叫ぶ子供たちの声公開

代わりに、マイクロソフトは声明を発表、「国境で行われている、家族からの子どもの強制的な引き離しに失望している」と述べた。加えて、自社のコンピューターソフトウェアやクラウドサービスがICEと関連付けられるのを避けようと試みた。公開された録音音声では、引き離された子どもたちが親を呼んで大きな泣き声をあげる様子がはっきりと確認できる。これに手を貸していると思われたら一大事なのだ。

声明は以下のように述べる。「疑問への回答として、明確にしたい点があります。マイクロソフトは現在、家族から子どもを引き離す措置に関連するプロジェクトに関しては、米移民・税関執行局や税関・国境警備局に協力を行っていません。また、一部で憶測されているような、アジュールおよびアジュール関連サービスがこの目的で用いられている例は、当社では認識していません」

声明の最後で、マイクロソフトはトランプ政権に対し、「政策を改める」よう促すと共に、連邦議会に対しても、「子どもたちが家族から引き離されることを防ぐ法律を成立」させるよう求めている。ICEとの緊密な関係を今後どう継続していくのかについては、明言しなかった。

ブルームバーグのデータによると、マイクロソフトとICEとの契約は、現在有効なものだけでも1914万ドルにのぼる。

(翻訳:ガリレオ)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中